宝塚史に刻まれるファントム
今日観たファントム、望海風斗さんのエリックには、やはりW.ブレイクの詩の世界を感じずにいられませんでした。
まるでブレイクの詩の中の穏やかな風景の中に潜む魔物のように、
エリックの心の純粋さと美しさの中に潜む狂気を、望海さんは迫真の演技で演じてくれました。
望海エリックは、豪華絢爛なオペラ座の地下深くに住むミステリアスな王子様ではなく、姿なき幻影になぞらえてファントムと呼ばれている悲しき怪人でした。
今日の大千秋楽公演、ライビュでの観劇になりましたが、
ムラで数回観た時にも増して、望海エリックは一人の人間として、孤独や醜さをストレートに表現されているように感じました。
新しいファントムと望海風斗
初演はどちらかというと、エリックの生まれ持った悲劇性を美しく表現した宝塚的な演出でした。
初めてファントムの世界を観た私たちにとっては衝撃的な舞台でした。
私は当時宝塚を離れていたので映像のみの視聴でしたが、妹1は感動のあまり何度かリピートしたとか。
最初に観たものはそれほど印象付けられるものです。
→その妹1も今回のファントムには感動しきり。
再演を重ねる毎に少しずつ演出が変わり、今回は最もイェストン氏のファントムに近づいた演出となり、エリックが生身の人間として描かれていました。
それは望海風斗というスターを最も輝かせる演出であったと確信しています。
だいきほの歌の素晴らしさに関しては今更語るまでもなく。
今日はスクリーン越しですが、最後に2人の歌を聴くことができて感無量でした。
演出については好みですし、演者の好みもあります。
今回の舞台を観ることで、過去の方が好きだったわ、と懐かしい舞台に思いを馳せる方もいらっしゃるでしょう。
忘れられない舞台はあるものです♡
それは素晴らしいことですね。
過去のどの組のファントムも今の雪組と同じように、その時のその組にしかできない最高の舞台を作ってこられたのですから。
私もこの舞台がそうなることでしょう。
舞台でトップさんや組カラー、時代に応じて演出が変わるのは普通のことですが、いろいろな違いなども楽しめるのは観客冥利に尽きると思っています。
さて、今回の演出は、私が望海さん真彩さんファンであること、雪組ファンであることはさて置いて、個人的にはとても共感できるものとなりました。
無防備で感情的で幼い心を持ったまま育ってしまったエリック。
音楽を愛し、詩を愛し、自然を愛し、クリスティーヌを愛した。
その意味では純粋で美しい心を持った青年です。
一方、特異な世界で育ち、希薄な人間関係、孤独で大人になりきれないもう一人のエリック。
カルロッタを手にかけることへの躊躇の無さ、
クリスティーヌへの愛さえもキャリエールは危険だと考えている。
エリックが併せ持つ二つの内面はぶつかり合い溶け合い、エリックの人格を作っていきます。
心の中の光と影
望海さんは、エリックの心の闇を歌にのせて見事に表現してくれました。
結果として、序章から終章まで、私たちは目の前のエリックの残酷な運命に涙せずにはいられませんでした。
美しい心と醜い心
これはエリックだけではなくて私たちの心の中にも潜んでいるものです。
生きていて嫉妬や憎しみを感じない人はいないでしょう。
理性で抑えられるものと抑えられぬもの
もし、私がエリックならば、やはり最期の瞬間「お父さん!」と叫んだでしょう。
なぜなら、恐ろしさに怯える一人の愚かな人間(子供)だからです。
もし私がキャリエールなら、全てを受け入れて罪を償いたいと思います。
哀れな息子を追い込んでしまった父親だから。
この後の現実を考える余地はありません。
このように、今までより登場人物の心情をリアルに感じることができたので、感情移入しやすかったです。
長くなりましたが、これらが今回の演出が好きだと思った理由です。
最後に〜閉幕〜
今回は望海さんだけにスポットを当てた感じになりましたが、本当に雪組の皆さんの一人一人素晴らしくて。
不思議ですが、キャリエールにも、クリスティーヌにも、シャンドンにも、名も無き従者の心にさえ寄り添うことの出来る舞台でした。
余談ですが (そうでもないかな) 、キャリエール役に関しては、歴代キャリエール役の方は全て素晴らしかった。
今回の彩風咲奈さんもそこに名を連ねるべく素晴らしいキャリエールだったと思います。
いくつかキャスト別の感想をブログ記事に書きましたし、ブレイクの詩についても書いています。
それでも、感動を書き尽くせるものではありません。
今日でこの舞台は閉幕しますが、『ファントム』の世界観は消えることはなくらいつまでも私の心の中に生き続ける宝物です。
カーテンコール、望海さん。
今日で雪組『ファントム』は、
「閉幕!」
「ありがとう〜」
素晴らしい舞台をありがとうございました。
雪うさぎ
↓ 過去感想 ↓ こんなに書いてる〜 笑
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