風のワルツ

宝塚歌劇、楽しくブログで綴ります。

月組『夢現無双』感想〜剣豪ふたり〜武蔵と小次郎

 

宮本武蔵ー無双への道ー

 

「おじさん 言うな」
おじさんのように強くなりたいと城太郎が言った後に武蔵が返す言葉。
何でもないセリフですが、武蔵(珠城りょう)が言うと妙に耳に残ります。

人生を剣にこだわり勝ちにこだわった男が洩らした、たわいない言葉が微笑ましく、心に留まったのかもしれません。

 

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『夢現無双』観劇の感想です。
吉川英治原作の『宮本武蔵』より、脚本・演出は齋藤吉正氏。


この公演、初回観劇してから少し日にちが経っていて、今日2度目の観劇でした。
実は感想に少し手こずっていました。
内容が盛りだくさんで頭の中が整理できなかったのです。

今回は印象に残った場面からの感想を書きたいと思います。
内容を知りたくない方はお気をつけください。

特に印象に残ったシーンは、次の3場面です。

千年杉の戒め
吉岡一門との戦い
巌流島の決闘

 

千年杉の戒め

 

お尋ね者として故郷に帰って来た武蔵が、人生の師となる沢庵宗彭(光月るう)に諭され、七宝寺の千年杉に吊るされる場面です。(モデルになった木は大聖寺の大銀杏)

このようなお仕置き、今は見ることのない光景ですが、たまに時代劇などに出てきますね。

大概は男の子に対する父親の躾けのようですが、
武蔵の歌の歌詞にもあるように、男たるもの、と願う親心でしょうか。

舞台では、俺は強いと自負する武蔵を、おまえは誰よりも弱いと諭す沢庵和尚。

この頃の武蔵は傲慢で、誰よりも強くなる事にしか価値を見出せない男。
この場面は演出の齋藤先生が原作を読んで描きたかったシーンだそうですが、年若い武蔵の暴走を戒める為の愛の形として印象に残りました。

このシーンで珠城さんが木に吊るされて歌うのですが、心に響くいい歌でした。

宮本武蔵は五輪書(兵法書)でも知られるように剣豪としてだけではなく、兵法家でもあり芸術家でもありました。

知略にも長けた剣豪として、珠城さんには映画やドラマとは一線を画した、宝塚ならではの強さと美しさを持つ武蔵を演じて欲しいと思ってましたが、ほぼイメージどおり。

また、今回の衣装は終始着物の色も柄も地味でしたが、武蔵の無骨さや男っぽさが際立っていてとても良かったと思います。 

 

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武蔵が吊るされた千年杉のモデル

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武蔵とお通の銅像   

 引用:https://www.e-tsuyama.com/report/2014/09/post-741.html

 

吉岡一門との戦い

 

京都の吉岡一門と言えば剣法の一派の名門です。
当主の清十郎 (暁千星)との勝負に勝った武蔵、
雪辱を果たすべく吉岡一門は武蔵に果たし状を送ります。

吉岡一門総勢70名余りと、武蔵ひとりの戦い。

有名な一条寺下り松での戦いです。

武蔵は容赦なくまだ幼さが残る大将を1番に斬りつけます。
勝利至上主義、無敵の武蔵の姿です。

このシーンでの珠城さんの殺陣は迫力ありました。

先に敗れた吉岡当主役のありちゃん。
今回はハッとするような大人の役です。

見た目は甘い王子様タイプだけど、時折見せるワイルドな一面。
大柄で華があるので、このような艶やかな大人の役も似合います。

ただ中盤でのこの場面は、もう少し派手な演出にして盛り上げても良かったのではないかと思いました。

 

巌流島の決闘

 

この公演がサヨナラとなる美弥るりかさん。

勝ちにこだわる武蔵は、天才剣士・佐々木小次郎(美弥るりか)に勝つことを大きな目標にして生きてきたところもあります。

この小次郎との巌流島での戦いのシーンは、終盤の最大の見せ場です。

約束の時間に待つ小次郎、遅れてきた武蔵。

燕返しと二刀流の闘いは思うよりあっけないもの。
命をかけた勝負とは案外そんなものかもしれません。

*余談ですが、この巌流島 (下関) には、かつて坂本龍馬とお龍がやって来て花火をして遊んだそうです。

さて美弥るりかさん、全編を通してやはり美しい。
美剣士・佐々木小次郎を宝塚的に再現するとこうなりますよという完璧なヴィジュアル。

紫の衣装もよく似合い、殺陣など力強い珠城さんとは好対照の剣士ぶりで、視覚的にも楽しめました。

美弥さんの圧倒的な存在感は言わずもがな、声の響きが良くてセリフの一つ一つが胸に沁みます。

海乃美月の吉野太夫との艶やかな語らいのシーン
月城かなとの又八との出会いの笑えるシーン
珠城りょうとの白熱した対決のシーン
そして散り際の美しさよ。

どこを切り取っても美弥さんの佐々木小次郎が溢れています。
改めて素敵なスターだと感動を覚えました。

美弥るりかの佐々木小次郎、忘れることはありません。

 

武蔵とお通

 

大劇場お披露目となる美園さくらさん。

今回さくらちゃんが珠城さんの相手役に選ばれた理由がわかりました。
声もビジュアルも雰囲気もとても合っていて、素敵なコンビ誕生です!

珠城さんは声に温かみがありますが、2人の相性の良さでそれが生かされているように思いました。
さくらちゃんは歌も上手で独特の雰囲気(魅力)を持っているので、この先味わい深くなっていくのではないか楽しみです。

 

武蔵とお通の恋はすれ違いで結局は成就することはないのですが、そのもどかしさが切なくて良かったです。

剣の道を極める宮本武蔵に、家庭を持ち落ち着いて堅実に生きようという人生の選択はないのでしょう。

選ばれし男を好きになったお通の一途さや寂しさがひしひしと伝わってきました。

 

外見は凛々しい又八、月城かなと

 

れいこちゃん(月城かなと)はちょっと情け無い武蔵の幼友達の又八役です。

最初キャスト発表された時は、正直え?またそういう役?と思いました。
別箱ではともかく、大劇場公演では持ち味とは真逆の役が多いように感じるのです。
それはそれで良いのですけどね。

 

ところでこの又八、いい働きをしています。
いい働きといってもお芝居の中では真面目に働きません。

楽して生きることに命をかけているという。
いつの時代にもこのようなタイプの人間はいるわけで、皆が皆、己に厳しい人間ではないのです。
むしろ出来るなら楽して生きたいと願う人は少なくないと思います。←あ、私も。

それをきっちり形にしているのが又八。
人生お気楽主義の又八ですが、彼も武蔵と共に成長していきます。

そんな又八をれいこちゃんは肩の力を抜いて演じてました。
力を入れるのは容易いけれど力をを抜くのは案外難しいものです。

真面目なイメージのれいこちゃんですが、おちゃらけた役もこなれてきたのか随分と堂に入ってきました〜(嬉し泣き)

だ・け・ど  
そろそろ大劇場公演でもれいこちゃんらしい中身もパリッとした役をください!(*≧∀≦*)

 

印象に残った役

 

・又八の母親お杉役の夏月都さん。

なつこさん、息子を溺愛するかなり個性の強い役です。
息子を持つ身としては全く理解できないこともないですけどね。

親とは理不尽なもので。
我が子のことになると、逆恨みだとか、人に責任をなすりつけるとか、常識を超えて鬼と化す可能性を秘めているのかもしれません。

お杉さんはちょっとやり過ぎですけど、舞台ではこれくらいインパクトがある方が面白いでしょう。
なつこさんの演技とても良かったです。

 

吉野太夫海乃美月さん。

知的で教養があって色気ある太夫
琵琶を持つ姿が綺麗でした。
こういう役はやっぱり海ちゃんでしょう。
美弥さんとの並びが好きなのですが、やはり美しく舞台に彩りを添えてくれてました。

 

辻風黄平の風間柚乃くん。

1度目の観劇に一緒に行った妹2は、この前のアンナ・カレーニナが十数年ぶりの宝塚で、この大劇場公演はやはり十数年ぶり。

その妹2が、おだちんをしっかりキャッチして、面構えが良くて凄く楽しみな生徒さんだと。
タカラジェンヌの美しい顔を面構えと表現するのも面白いけれど、この舞台では確かに確かに。
今回は不良の一団のヒール役、決まってました。

夏の別箱公演はれいこちゃんと一緒にチェ・ゲバラ出演ですね。
おだちんのことは私も期待しています。

 

感想、少し書きあぐねていましたが、書き出すとまだまだ足りません。

他にも武蔵の成長において大きな影響を与える人物など数名気になった方たちがいるのですが、もう3500文字近くになってきました。

あともう少しだけ。

 

武蔵の夢と現(うつつ)

 

お通への恋は心の奥にしまい込み、剣に生きる道を選んだ武蔵。
宿敵小次郎との決闘に勝ち、無双という夢が現(うつつ)になった時、彼は何を思ったのか。
もう一つの別の人生を思ったのでしょうか。
観た後に、結構じわりじわりとくるタイプの作品です。

 

 月うさぎ 

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