月組公演『I AM FROM AUSTRIA-故郷は甘き調べ-』初日観劇レポです。
素晴らしい作品に出会いました。
ふんだんに散りばめられたユーモアの中にも心に響く言葉がたくさんあり、
ハッピーエンドで幕が降りた後、あかりが心にぽっと灯ったかのような温かい気持ちになりました。
ウィーンの街は美しい。
たまさく(珠城・美園)が2人でウィーンへ旅されてましたが、さすが音楽の都、街のあちこちに芸術が感じられました。
私も過去に2日ほど訪れたことがありますが、流れる川や風に揺れるの木々の葉でさえ美しく…笑
そんな素敵な街の老舗ホテルの御曹司ジョージがこのミュージカルの主役です。
ここからは少しネタバレがあるかもしれないのでお気をつけください。
トルテは故郷の味
この記事のタイトルは「始まりはトルテ」としました。
ジョージとエマが仲良くなったきっかけは「エードラー・トルテ」というホテルの名物ケーキです。(ザッハトルテのようなケーキ)
老舗ホテルの御曹司とハリウッド女優という華やか(本質はピュア) な2人の始まりは甘いトルテから。
幸せの予感しかありません。
そして大切なことはウィーンで育った2人にとってトルテは懐かしい故郷の味だということです。
エードラー・ホテルで育ったジョージにとっては尚更です。
それもありタイトルにどうしてもトルテを入れたかったのです。
ジョージ/ 珠城りょう
さて、ジョージ役の珠城さん。
『I AM FROM AUSTRIA』は珠城さんの代表作になるのではないでしょうか。
ジョージは育ちが良くて温厚で優しくて。
信念を持ち実行力もあるバランスの取れた青年です。
彼氏だったら素敵だな
息子だったら幸せだな
友達だったら楽しいな
珠城さんの温かみのある声と優しいセリフが上手く融合して、持ち前の包容力が存分に生かされていました。
珠城さんには青柳さんなど他にもハマり役がありますが、今回は全てを上回るほどではないかと…。
あと、各場面ごとのバラエティに富んだナンバーがどれも印象強くて素敵です。
同じウィーンミュージカルのトートナンバーより珠城さんは今回の楽曲の方が合っているように感じられました。
好みや感じ方でしょうが。
悩みながら奮闘しながら成長していく過程を珠城さんのジョージから伝わってきてとても良かったです。
エマ/ 美園さくら
たまさくコンビになってまだ1年未満とは思えないですね。
エマは20世紀号のリリーのようにナンバーもたくさんある大きな役です。
オーストリア出身の有名なハリウッド女優ですが、心が疲れきっている様子。
ジョージに出会って、自分のアイデンティティ(自分が何者なのか) を確立することで、故郷や母親への愛を取り戻し成長していきます。
自分のルーツを探求することは難しいけど大切なことなんですね。
さくらちゃんは歌も演技も全体的に安定していて、舞台度胸もありそう。
とりわけダンスはダイナミックで見応えがありました。
衣装もブロンドも似合ってましたよ。
可愛らしさと冒険心を併せ持つ魅力的なヒロインでした。
パブロ/ 暁千星
アルゼンチン代表サッカー選手パブロ役ですが、今回1番驚いたのはありちゃん。
登場シーンからオーラ全開です。
スター選手パブロのオーラなのか、暁千星の放つオーラなのか…
刈り上げて束ねた髪と顎髭と、アスリート並みの動きで、マッチョ、マッチョ♪
男っぽくてかっこいい。
このパブロはとてもいい人なんです。
愛ある人です。
彼自身も自分のアイデンティティを探求し、悩み、素直に自分と向き合うことで理想の人に出会うことになります。
恋は成就するのかどうか・・。
彼のような人には幸せになってほしいですね。
ありちゃんの演者としての可能性、広がりには毎回驚かせられます。
フェリックス/ 風間柚乃
ジョージの友達でホテルのフロント係のフェリックス役ですが、ゲバラでのカストロ役からの転身ぶりにびっくり。
おっちょこちょいのところがある可愛い役でした。
そしてとてもいい!
私はルキーニやカストロのようなインパクトの強い役柄こそおだちんの威力を発揮できると思ってましたが、考え改め。
コミカルで可愛い役もこなせてホントに振り幅の大きな人です。
珠城さんや(まさかの)轟さんの友達まで普通にできちゃうところが凄いですね。
ストーリー最後に愛の告白を受けたおだちんの表情がとてもおかしかったです。
おだちんにはもう期待しかありません。
エルフィー/ 光月るう
るうさん今回は女役エルフィー役、楽しみにしていました。
ホテルのベテランコンシェルジュですが…独特です。
これは観なければ説明がつけ難い味です。笑
言動がかなり不思議さんですが、ジョージとエマの良き理解者であり、皆んなのリーダー的存在でもあるんですね。
男役が演じる女役は迫力がありますがエルフィーも然り、るうさんの巧みな演技に注目してください。
姉妹都市
『I AM FROM AUSTRIA』は1869年に日本とオーストリアの間に修好通商航海条約が結ばれて150年という記念の年に、105周年を迎える宝塚での上演が実現しました。
初日にはウイーンオリジナル版の作者、プロデューサーのウィーン劇場協会関係者の方々も観劇されていました。
この初日の貴重なチケットはT様のご厚意にあずかり観劇することができ感謝しています。
さて、日本とオーストリアにはたくさんの姉妹都市があるようです。
ちなみに宝塚市はウィーン市9区のアルザーグルントと姉妹都市として交流があるようです。
地図はウィーンの行政区地図。
ウィーンの中心部ですね。
ハッピーエンド
宝塚の作品に求めるものは千差万別、人それぞれです。
私の場合は泣いたら笑いたくなる、笑ったら泣きたくなります。
今回はハッピーエンド。
2人が仲良くなるきっかけとなった故郷の味トルテですが、
おそらくー、
この先エマはトルテを食べる度にこの日の出会いを思い出し幸せな気持ちになるでしょうし、ジョージは、トルテを口にしたエマの笑顔をずっと心に刻むのだろうと想像します。
そのように今が過去になり思い出となり、自分の歴史を作っていくのだなぁと。
帰りの車窓から暗くなった景色をぼんやり眺めながら、家族について、故郷について考えを巡らせるのも心地良い時間。
空気が澄み秋が深まるこの季節にぴったりのハートフルな作品です。
また観劇の機会があるので続きはゆっくり書いていきます。
月・うさぎ