冒頭から物語の内容に触れています。
礼真 礼真琴
瞳花 舞空瞳
礼真は瞳花の産んだ子を「希望の子」と呼びます。
周と汶一族の血を結ぶ子だと
この言葉には胸が熱くなりました。
劇中で礼真が母の幻と一緒に子守唄を歌うシーンがありますが、母が子を愛おしむ気持ち、子が母を慕う気持ちが溢れ出る場面です。
希望の子という礼真の言葉は母の愛が彼の記憶に刻まれているからこその言葉ではないかと。
礼真の成長物語でもあり物語は大きく動きますが、その根底にはいつも母の愛があるように感じられました。
礼真琴さんと舞空瞳さんのお披露目公演「眩耀の谷(げんようのたに)」の観劇感想です。
2月観劇時の感想に8月LIVE配信の感想を付け加えています。
礼真が、汶(ブン)族の聖地「眩耀の谷」で舞姫の瞳花に出逢い、己の進む道へと進んでいく。
聖地宝塚に生まれた礼真琴、舞空瞳コンビにふさわしい作品です。
礼真琴(丹礼真) と新生星組
紅さんの元で、伸び伸びと成長した組子の皆さんの活躍が目覚ましく、
新トップ礼真琴は、前トップ紅ゆずるだけではなく、北翔海莉、柚希礼音らから受け継いだものを礎に自らの男役像がしっかり確立されているように感じられます。
組の形が変わっても卒業された方は舞台に生き続けるということを、いつも以上に感じる舞台でした。
謝珠栄先生の初の作・演出の芝居作品になります。
紀元前の中国を舞台に、主役の礼真が悩み苦しみながら人生を切り開いていく壮大なストーリー。
出会い、挫折、裏切り、決別、選択、決意、様々な経験を通して礼真が成長していく過程が描かれています。
琵琶の音や礼真の歌は情感たっぷりに観客を物語の世界へと引き込んでいきます。
「胘耀」とは、
げんようとは眩(まばゆ)いほど耀(かがや[=輝])くこと。
目がくらむほど強く光輝くこと。
日本語表現インフォより
タイトルの「眩耀」は物語のキーポイントになっています。
(因みに礼真が生きたB.C.800年頃は日本では弥生時代が始まり、大陸から米(水稲耕作)と金属器が伝わってきた時代)
男役の剣さばきのかっこよさと娘役の舞の美しい優美さが幻想的に描かれていて、歴史ファンタジーを五感で楽しむことができました。
シャープな動きで躍動感ある動きの礼真琴は真っ直ぐで正義感の強い礼真役がぴったりです。
定評ある歌もダンスも申し分なく剣舞も見事、全てに安定感がありました。
見どころはたくさんあります。
将軍(愛月)と対峙するところ
謎の男(瀬央)との掛け合い
瞳花(舞空)への思い
仲間たちとの友情、信頼していたものの裏切り。
最後に礼真が選んだ道は生きるため、生命を繋ぐための選択です。
ラストは物語の終着点であるとともに礼真たちにとっては始まりでもあり、新生星組のスタートに呼応するかのように力強いシーンになっていました。
主なキャスト感想
舞空瞳 (瞳花)
お披露目役は重い過去を持つ舞姫、瞳花。
重い過去を持つ瞳花とはー
周の将軍の妾にされ子供を生まされ、必死で周国から逃げ出そうとした時に子を奪われた盲目の娘。
(その子を礼真は希望の子というのです)
そんな過酷な過去を持っていても透明感を失わない。
若いひっとんが可憐に、一方で強く懸命に生きる女性を好演していたことに感動しました。
瞳花が舞うシーンは花のようにふわりと、美しく綺麗で優雅です。
また瞳花の気持ちをセリフではなく、ダンスを通して表現するという難しい場面がありましたが、ひっとんの懸命さが瞳花の人生と重なりとても素晴らしいシーンになってました。
デュエットナンバーは素敵な曲。
食聖、モーツァルトを経て段々と息が合ってきた様子の2人。
次回作への期待が一層高まります。
愛月ひかる (菅武将軍)
宙組時代から専科を経て大きくなった愛ちゃん、舞台に厚みが出ます、存在感抜群です、かっこいいです。
トップと異なる魅力が生かされて星組異動は大成功、
恵まれた体躯に大人の渋さと色気が加わり堂々たる将軍役でした。
それだけに後半もう一場面、見せ場が欲しく思いました。
それに関して謝先生が歌劇誌座談会で話されてます。
礼真が成長し人間的に変わっていくところを主題にしているので、どうしても周国側の場面が少なくなると。
限られた時間枠では描ききれないということです。
役より演じ手の方が大きく感じられたことは勿体なく感じたところです。
愛ちゃんは今後大いに活躍してほしいですね。
瀬央ゆりあ (謎の男)
2月、私より先に観劇した息子2は帰るなり開口一番、
「良かった!せおっち凄いわ!」
星組ファンの彼はかなり興奮していました。笑
せおっちは龍の宮以来すっかり我が家では注目の人に。
今年は上がってきそうな予感がしていましたが、一気に来ましたね。
その後、息子2と物語の中でせおっちの役が担う役割についてなど色々と話をしました。
私が見逃したところに気づいていたり。私以上に感動していました。
謎の男は噂どおりの美味しい役。
お芝居も上手くて、ことせおの掛け合いも息がぴったりでした。
注目すべきはその歌です。
特にお芝居においては余裕すら感じます。
最近舞台のせおっちは、演じることをとても楽しんでいるように見えます。
せおっちの強みはまだ伸び代がありそうなところ。
ますます目が離せない存在です。
有沙瞳 (春崇)
語り部として上品で美しい姿、美しい声で物語を語り繋ぎます。
くらっちの登場で場が華やぎ空気が変わる、そんな力をつけてきたのだと思います。
この舞台ではとても可愛いくて、ショーでは愛ちゃんとの大人の並びがとても素敵⭐︎
物語の最後は大きな見せ場になってますね。
くらっちは星組において大きな存在になってます。
息子2は龍の宮コンビの今後が気になってしようがない ^ ^
もちろん私も気になるところです。
天寿光希 (慶梁)
お人好しの大輝真琴 (百央)と共に礼真の部下役。
個性の強い役が多いので、前半の爽やかな青年役は新鮮でした。
最後に人間の愚かさを見せる演技でギラリ! と、みっきぃならではの存在感を見せてくれました。
お芝居上手いなぁ。
綺城ひか理 (カイラ)
異動後一作目にしてしっくり感、星組に合ってますね。
落ち着いた演技と安定の歌声、いぶし銀のような大人の光り方が素敵!
天華えま (クリチェ)
あかちゃん(綺城)と眩耀の谷を守る汶族コンビで活躍。
平均的に何でもできてビジュアルも良いので、大きな決め手があれば更なるチャンスが掴めそうに思えます。
他にも極美慎、天飛華音、汶族側は出番が多くて若手の活躍が目立ちました。
音波みのり、小桜ほのか
2人のお芝居が好きです。
モーツァルトに続き、はるこちゃんの迫力ある演技引き込まれます、そして美しい。
ほのかちゃんはやはり星組の歌姫ですね、舞も綺麗で素晴らしいです。
2人の姉妹インパクトありましたー。
この公演で専科の華形ひかるさんがご卒業され、万里柚美組長が専科へ異動されます。
万里柚美 (母)
気品がありいつまでも美しい方です。
礼真と歌う子守歌には感動しました。
華形ひかる (宣王)
みつるさんの宝塚最後の役は周国の王。
この宣王は史実では賛否両論あり、結果的に周の滅亡を早めたということで暴君になるということです。
先ほどの謝先生の意向どおり、みつるさんも出番は少なく感じました。
ですが豪華な衣装で皆の真ん中に立つ姿は立派で、王の存在感が十二分に感じられ目に焼き付けることができました。
最後の幕が降りるまでみつるさんらしく世界の彼氏として完全燃焼してください。
これからの星組
私がこの公演を観劇したのは2月18日、我が贔屓の雪組トップ望海風斗さんの退団発表の翌日でした。
この日に観劇できたことは有難いことでした。
先述したように、退団された方々が様々な形となって生き続ける舞台を観ることができたからです。
星組さんからたくさんのエネルギーをいただきました。
琴ちゃんはオーラもあり歌もダンスもできる頼もしいトップスターです。
それ故に観客の期待値が高くて時に重く感じることもあるかもしれません。
それでも礼真琴-舞空瞳なら乗り越えるだろう、更に高みに登るだろうという力強さを感じます。
新しい地に生きる希望を見つけた礼真と瞳花のように、2人が今までの星組の歴史にどのような物語を築き上げていくのか楽しみです
星・うさぎ