風のワルツ

宝塚歌劇、楽しくブログで綴ります。

宙組『FLYING SAPA ーフライング サパー』感想

 

上田久美子先生の期待された通り波紋と喧騒を呼んでおります『FLYING SAPA』


作品については色々な見方があり考え方があり、先生は賑やかに意見が飛び交うそのような状況を期待されていたのではないかと感じます。

8月5日観劇の感想をやっと書くことができました。

皆さんスラスラと感想を書いておられて、羨ましいなぁと、
ひとり地球に取り残された気分でした。

この状況で宙組の皆さんが千秋楽まで無事上演できたことは本当に良かったですね。


f:id:wind-waltz912:20200814231717j:image

 

以下、内容に触れています。

 

記憶

 

記憶というのは楽しい記憶より嫌な記憶、辛い記憶の方が定着しやすいらしいです。
同じ失敗をしないようにしようとする危機管理能力からだそうですが、何とも厄介な仕組みに感じる時もあります。

そういや私も思い当たることあります ^^;
忘れたいことほどいつまでも覚えていたりします。

 

ー3人の記憶
いきなり激しいところからになりますが、

ブコビッチ(総統01)の地球での記憶は確かに凄惨極まりないものでした。
彼は決して悪人というわけではないと思います。
しかしポルンカ(水星)は、誰かの犠牲と彼の怒りや憎悪を基に作り上げたユートピアに思えるのです。


記憶を消された1人の女ーミレナ
彼女もまた戦争での犠牲者のひとり。

彼女が自分の身体を粗末に扱う(男たちと関係を持つ)ことから想像はつきました。

幼いミレナが兵士に襲われたことを示唆する場面、
必要性の是非はともかく、心が辛くなるシーンでした。
宝塚の舞台だからということもあるでしょう。

 

消されていた過去の悲劇を知り混乱するオバクにブコビッチは問います。
「人間が憎しみと全ての記憶を抱えたまま共存出来るのか?」

 

余談になりますが、戦争と記憶という言葉が出てきたので少し書かせてください。

戦後75年を迎えた日本、戦争体験者の高齢化が進んでます。
先日新聞で零戦に搭乗されたMさんの手記が掲載されていました。

「上空で米軍と交戦中弾薬が切れるも追撃を逃れ助かった。
仲間の死を前にしてまだ生きているという罪悪感は拭えない」と。

終戦後は教師になられ結婚されて平穏な日々を過ごされているようですが、90歳を過ぎるまで記憶を封印し口に出せなかっったそうです。

「心の整理にはそれだけの年月が必要だった、それが戦争だ」と言われています。

Mさんの中で封印されていた過去の辛い記憶が、75年という長い年月をかけて少しず整理されていったのかもしれません。
戦争を知らない私ですが、この地球で生きること、人間として生きるということはそういうことなんだとSAPAの世界を思い出しながら考えました。

 

キャストについて


真風涼帆

オバク役は真風さんの魅力全開、作品の持つスタイリッシュで不思議な空間に佇む姿は絵になります。
日常の気怠さとリーダーシップを取るカリスマ性、どちらも惹きつけられました。
ゆりかさんファンの親友、鼻血出してた可能性あり、連絡してみます。

 
星風まどか
可愛いらしいイメージですがスタイリッシュな衣装も似合いますね。
歌がないのは残念でした。
難しいミレナ役をクールに淡々と演じ、研ぎ澄まされた演技力に感動しました。


芹香斗亜
ノアは精神科医だけあって人物を冷静に観察して理解しているように思います。
包容力のあるキキちゃんの受け身の演技は秀逸でした。
ノアの笑顔には癒されました、きっと凄い名医なのでしょう。


夢白あや
観客を惹きつける力が大きいと思いました。
クラシカルな雰囲気も持ちながら、イエレナのようなかっこいい大人の女性もよく似合う。
舞台度胸もありそうで期待値は高いです。


寿つかさ
ドラマティックなストーリーでありながらドライな雰囲気のお芝居の中で、しがない公務員のおじさんタルコフは大きな働きをしています。
無口なヒーローをサポートする人間味のある男を味のある演技で好演されてます。


同期生コンビ 汝鳥伶 / 京三紗
お2人とも57期生。
(演出家の謝珠栄先生、花組の元(w)トップ娘役だった北原千琴さんも同期生。妹はまどかちゃんを見ていると北原さんを思い出すそうです。)


汝鳥さんはポルンカを統制する総統01、京さんはSAPA違法ホテルの女主人キュリー夫人として、2人の存在感には圧倒されました。
まだまだ活躍していただきたいお2人です。

 

 ノアの方舟について


ノアはキキちゃん演じる精神科医の名前ですが、多くの方が旧約聖書の創世記の中のノアの方舟をイメージされてます。
私もそこからではないかと思っています。

簡単に説明すると、
神は地上での人々の堕落があまりに酷いので大洪水によって人間を絶やそうとした。
信心深いノアに方舟を作るよう命じ、そこにはノアの家族と選ばれた生き物だけが入ることができて生き残ることができた。
 
サパでは荒廃した地球から科学者など選ばれた人が難民船で水星ポルンカへ向かいます。
憶測に過ぎませんがSAPAでのノアの働きを考えると、何らかの繋がりを感じます。

旧約聖書の原語はヘブライ語ですが、ヘブライ語でノアは休息や癒しという意味を持ちます。

 

ウエクミワールド


2年前に京都大学未来フォーラムで上田久美子氏が公開講座を開かれました。
残念ながら出席できませんでしたが、お友達のSさんから貴重なレジュメをいただきました。

その中で物語の役割について、三つをあげられています。
・共感の拡張
・痛みの肯定
・悪の可視化

全てお伝えできないのは残念ですが、少し抜粋いたします。

・ピュアワールドで人は「共感」を好むが、その「共感」は往々にして自分に似た人を見つけること、自分と同じ価値観で行動する人だけを愛することだ。


・描かれた「痛み」に触れ、知っておくことで、それが現実の自分にふりかかった時にも、あくまで一つの経験だと客観視することができるようになる。


・ピュアになりすぎて内なる悪の存在を自分にも相手にも許さないと、必要以上に傷付きやすくなったりする。

「パンとサーカスの危ない時代に」より

 ウエクミワールド感じませんか?
 

 最後に

 

SAPAは絶賛の声が多いように思います。
別箱公演でのチャレンジ作品として多くの方の心を掴んだことは注目すべきことでしょう。

美しい映像や雰囲気のある音楽、出演者の演技力の高さ、完璧なストーリー構成など、総合芸術の素晴らしさが十分感じられました。

それでも私自身、この作品に特別心をつかまれることはありませんでした。
痛みを伴うロマンを好まないわけではありませんが、私の求めるロマンとは異なるものなのかもしれません。(分かりません)
これも今の自分の一つの感じ方として大切にしたいと思っています。

しかしかなり刺激を受けましたー。
次に観た時はどう受け取めるのか、いつかもう一度向き合いたい作品です。

あ、そうだ、物語の続きが気になりますね。
ポルンカに残る人とまだ見ぬ星空へと旅立つ人。

これもいろいろな捉え方があると思いますが、結果よりも自分がどう生きたいかというところからの未来でしょうか。
まだまだ考える余地がありそうです。


久しぶりに宙組公演を観劇出来たことは嬉しかったですね。
皆さんの熱量が素晴らしく、キキちゃんにも会えましたし♡←

来月、東京でも無事に上演されるよう祈ります。
そして日生劇場ではどんな波紋と喧騒が生まれるのか楽しみにしています!


宙・うさぎ