宙組公演『壮麗帝』LIVE配信での観劇感想です。
- 95期生の活躍
- 桜木みなと / スレイマン(壮麗帝)
- ハレム
- アレクサンドラ(ヒュッレム)
- 遥羽らら /アレクサンドラ(ヒュッレム)
- スレイマニエ・モスク
- 和希そら / イブラヒム
- その他のキャスト
- 最後に
8月は近未来のポルンカ(水星)と16世紀初頭のオスマン帝国と2つの宙を旅し、色々な意味で宙組の強さを感じました。
強さといえば95期生について感想の前に少しだけ書かせてください。
95期生の活躍
『壮麗帝』主演、桜木みなと。
同期の礼真琴、柚香光も公演中止を余儀なくされながら組を率いて限られた舞台に立たれてますが、ずんちゃんも堂々たる主演でした。
『ダル・レークの恋』が控えている(と思われる)月城かなと、『龍の宮物語』で一躍時の人となった瀬央ゆりあ。
朝美絢の目覚ましい成長と快進撃、水美舞斗の揺るぎない存在感とスターオーラ。
皆さんの努力、頑張りが次々と花を咲かせています。
もちろん7名だけではなく卒業組も含めて人材豊富な95期生の勢い、強さを感じます。
男役に関しては10年を通過した今、自分の理想の男役像に近づきつつある時期で同期の活躍は何より刺激になると思います。
壮麗帝のずんちゃんも皆の刺激となったでしょう。
桜木みなと / スレイマン(壮麗帝)
そんな華やかな95期生の中で着実に前進しているずんちゃんでも、同期の皆んなに置いていかれているようで焦りを感じていた時期があったそう。
詳しくはこの記事に書かれています。
スレイマンはヨーロッパでは壮麗帝と呼ばれ、後にオスマン帝国が衰退した時 「スレイマンの時代に戻れ」 と言われるほど皆の手本となった皇帝です。
そんなスケールの大きな皇帝ですが、ずんちゃんが気負わず演じることで不自然さが全く感じられずお芝居に集中できました。
大宰相イブラヒムとの関係、寵姫アレクサンドラとへの愛も表現力が的確で最後まで引き込まれました。
ところでずんちゃんは作品によって色んな人を思い出させてくれます。
例えば真飛聖さんの端正な甘いマスクだったり(妹がよく言う)、杜けあきさんの憂いある表情だったり(特にルドルフの時)、
この公演ではフィナーレの場面で大空祐飛さんを感じずにはいられませんでした。
思わず妹にLINEしました。笑
ゆ、ゆうひさんや〜
(いつかヨン・ホゲを)
歌って良し、ダンスも色気たっぷりでずんちゃんの役の振り幅の広さに感動しました。
さて、オスマン帝国といえば気になるハレムの存在。
日本では1人の男性に対して複数の女性が取り巻くような状況をハーレムと言いますね。
舞台にも出てきたハレム、実際にはどんなところでしょう。
ハレム
スレイマンの住むトプカプ宮殿にはハレムなる宮廷の女性だけの住処がありました。
女たちの戦いの場でもあったでしょう。
日本で言うところの大奥ですね、
文化も違うので仕組みは違うようですが。
オスマン帝国のハレムには皇帝1家の女性と子供たちもいます。
権力の頂点に立つのは皇帝の母后です。
権力争いが激しくなる状況で、自身が生んだ息子が皇帝に即位するとハレムの女主人として高い尊敬を払われるようになります。
けれど後継者となりうる男子を産んでも皇帝とは法的な婚姻を結ぶことはできず、奴隷身分のままというのがきまりです。
なので奴隷出身のアレクサンドラ(遥羽 らら)が正式な妻にまで取り立てられたのは稀有なことなんです。
スレイマンの寵愛ぶりが分かると思います。
母后になるとハレムを取り仕切り、政治にも発言できかなりの権力を持つことになります。
給与は上の階級ほど高く、ハレムの女性たちはかなりの給料を貰っていたようです。
またハレムには様々な職務があったようです。
洗濯係、財務係、毒味係、配膳係など。
ハレム内で母后、女官長など地位を持つ女性は社会貢献も要求されました。
栄光と挫折が渦巻くハレム、当時1000人ほどいたライバルの中で選ばれたアレクサンドラはどんな女性だったのか気になります。
アレクサンドラ(ヒュッレム)
史実によるとアレクサンドラは豊かな知性を持ち内政や外交問題について助言もしていたそうです。
また機知に富んだ会話で周りのものを惹きつける魅力があり、皇帝からヒュッレム(幸福な、陽気な人)と名付けられました。
これら↑ は私たちも劇中で目にしたアレクンドラの姿です。
純粋で真っ直ぐで快活な女性。
さらに彼女には野心家の一面もあり、色んな陰謀や企てに加担していた可能性もあると言われています。
敗者は容赦なく排除される時代を生き抜く為、彼女も自分や息子たちの身を守る必要があったでしょう。
もしも『壮麗帝』がスレイマンとイブラヒム(和希そら)よりも、アレクサンドラとの関係を濃密にした物語にするなら、後半は彼女の野心メラメラの部分を出さないと盛り上がりに欠けそうです。
やはりこの作品は、スレイマンとイブラヒムとの関係を主軸にしたずんららそらの3役のバランスがベストだと思いました。
遥羽らら /アレクサンドラ(ヒュッレム)
そんな魅惑のヒロインアレクサンドラを演じた遥羽ららさん。
この作品で描かれるヒュッレムにぴったり。
癒し系の笑顔にキラキラ輝く真っ直ぐな瞳、
ポジティブで快活な性格はハレムの厳しい決まり事にも屈しません。
北風と太陽のおひさまのようにぽかぽか周りを暖めていく。
気がつけば彼女の周りは笑いがたくさん、戦うことなく勝利を手にしてるみたいな。
ららちゃんのアレクサンドラが放つ華やかな魅力は、さすがのスレイマンも虜になるだろうと思える説得力がありました。
また後半は母親としての強さも感じられ全体的に安定感のあるお芝居でした。
スレイマニエ・モスク
スレイマンがアレクサンドラにいつか一緒に眠ろうと言ったモスク(イスラム教の礼拝堂)。
オスマン帝国黄金期の象徴であるモスクが旧都イスタンブールにあります。
立派ですねー
スレイマンによって、トルコ史上最高の建築家ミマール・スィナンが設計して7年の歳月をかけて完成しました。
約束どおり、この中にスレイマンとアレクサンドラは眠っています。
建物はその後火災や戦争の被害を受けて修復されていて、現在世界文化遺産になってます。
いかにスレイマンが栄華を極めていたかわかると思います。
和希そら / イブラヒム
そのスレイマンの右腕となり奴隷から大宰相にまで登り詰めたのがイブラヒムです。
彼もまた運命に翻弄された男といえるでしょう。
ぶっきらぼうな奴隷時代、栄華を掴んでからの孤独感、ハティージェとの束の間の幸福感、皇帝とのすれ違い、落胆、絶望、
全ての感情が和希イブラヒムの全身から伝わってきました。
そらくんは最近顔がとみに引き締まってきてますます男前に。お髭も似合ってました。
歌やダンスは大きな魅力なので今後さらに活躍の場が広がるでしょう。
宙組公演デビューの同期生、紫藤りゅうくんはSAPA組、
2人とも素晴らしい活躍でした。
こちらも互いに良い刺激となりそうですね。
その他のキャスト
天彩峰里 / ハティージュ
可愛いけどフワフワしたお姫様ではなく活発で意思の強いお姫様を好演。
大人になるにつれて包み込むような大きさを感じさせる役づくりがとても上手いです。
旅立つ前のそらくんのデュエットは最高に素敵でした。
鷹翔千空 / アフメト
今回感心したのはギラギラの野心家を見事に演じたこってぃ。
SAPAでは夢白あやさんの舞台度胸の強さに驚きましたがこちらも凄かった。
ソロも堂々としていて惹きつけられました。
素晴らしい。
悠真倫 / マトラークチュ
彼も実在の人物。ボスニア生まれの天才はオスマン帝国でその才能を発揮します。
舞台では宮廷史家として年代記を書き、また絵師としても活躍しています。
物語の語り部も担う重要な役どころで、悠真さんの穏やかで明瞭な声は心地よく耳に入りました。
最後に
私がこの時代のオスマン帝国についての歴史に疎かったこともあり、ハレムやモスクについてなど調べつつ進めてきました。
スレイマンや一族の豪華絢爛な衣装なども興味深いものでした。
もう一つ「トルコ行進曲」について書きたかったですが、長くなるのでここには記しません。
ご興味のある方はこちらをご覧くださいね。
http://akira-naito.com/essays/ongen2.pdf
宙組の2公演が8月大阪で幕を開け中断することなく千秋楽を迎えたのは素晴らしいことでした。
来月『FLYING SAPA 』の日生劇場の幕が無事上がりますように!
また『壮麗帝』もいつか東上される日が来ることを祈っています。
宙・うさぎ