風のワルツ

宝塚歌劇、楽しくブログで綴ります。

月組『ピガール狂騒曲』感想〜月城かなとの輝きを見た

1度の観劇予定でした。
気がつけば追いチケしながら数回観劇することになりました。

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舞台はベル・エポック(美しき時代)
ー19世紀末からの25年間(1889-1914)ー

シェイクスピアの「12夜」を枠組みに、華やかなりしパリのムーラン・ルージュを舞台にレビュー仕立てにしたコメディ作品です。 

 

日本物ショーWTTの感想です↓↓↓ 

www.wind-waltz912.com

今日は配信を観ることが出来ませんでしたが、観劇後に少しずつメモしていたものをまとめてみました。 

         ミュージカル
   『ピガール狂騒曲』〜十二夜より〜
        作・演出/原田 諒

 

珠城りょう -輝月ゆうま-


早速ですが珠城さんの感想から進めて行きます。

珠城さんの役は2役、
女役  ジャンヌ→男装してジャックに。
男役  ヴィクトール
 
事情があって物語の大半はジャックとして登場します。
オスカルのように男装の麗人…なのですが、ジャックは男として育てられたわけではなく軍人でもなく普通の可愛い人。
それがちゃんと伝わってくる役作りをされています。
 
例えば、歩き方、しぐさ、化粧、表情など、雰囲気の違いでごく自然にジャックとヴィクトールは切り替わります。
14回の衣装の着替えは大変でしょうが私たちはそれも楽しいです。

珠城ジャックは茶目っ気たっぷりで可愛くて、ヴィクトールになるとイケメンになる。
アドリブ含めこんな自由な珠城さんを観たのは初めてかもしれません。

ジャックを追いかける女衒の元締めマルセル(輝月ゆうま)ら4人組もコミカルでストーリーを盛り上げます。
まゆぽんはこのお芝居のスパイス的な役柄を担っていて、アドリブも動きも上手くて無駄がなくて本当に素敵。

最後にジャックとヴィクトールが同時に出てくるところ。
珠城さんがジャック役として登場している時に、蒼真せれんくんが突然ヴィクトールになって出てきたのは、ちょっとしたサプライズでした。(セリフは珠城さん)

 

美園さくら  


美貌の女流作家ガブリエル・コレット
ガブリエルはこの時代には珍しいほど自立した現実的な女性で自分の考えを主張できる人です。
スタイル良くてどんな衣装も着こなせる、声質もしっかりしているさくらちゃん。
歌も演技もダンスも申し分なくゴージャス感があるので、こういうお役はぴたっとハマります。

ただIAFAのエマと少々役柄が被るところは否めません。
『赤と黒』が未見なので余計にガラッと違う役柄を演じるさくさくが観たいという思いがあります。
それは次回作で叶うと思っていますが、4作で最後となるのはやはり残念に思います。

 

実在の人物ガブリエルと夫のウィリーについてはまた後ほど。
 

鳳月杏 -風間柚乃 / 夢奈瑠音-


作家のウィリー(ゴーティエ=ヴィラール)
実は妻のガブリエルがゴーストライター
彼も実在の人物です。

見た目はダンディ、中身はコミカル担当のちなつさん、絶妙なアドリブ、同じくコミカル担当のおだちん、るねくんを巧みにリード、さすがです。

暴走しているようで計算されたセリフやアクションは本当に素晴らしいと思います。

 

そのちなつさんの弁護士ボリス演じるコミカル担当2のおだちん(風間柚乃)、目立ってましたね。
私は代役で観たルキーニが未だ忘れられず(あるいはカストロ)、今回もまた同じ人と思えませんでした。←褒め言葉

また秘書役の夢奈瑠音くんもこのコミカルメンバーの1人として大活躍。
このトリオは最高でした。

 

さてイケメンもコミカルも女役も悪役も何でもござれのちなつさんですが、大劇場でもちなつさんのかっこいいイケメン役と歌とダンスをたっぷり観たいですね。

男役の色気や魅力が完成されてきて今とても輝やいているちなつさんなので、今後も一層の活躍を期待しています。

 

実在のウィリーとガブリエル


実在した破天荒な夫婦、ガブリエル(美園さくら)とヴィラール(鳳月杏)について。
 
ガブリエル・コレットはフランス文学界で最も知られている女流作家です。
彼女が書いた数々の作品は演劇やミュージカルとなり、テレビで放映され映画化もされました。
2019年には映画「コレット」でヒロインのガブリエルをキーラ・ナイトレイが演じています。未見ですが大好きな女優さんなのでぜひ見たいと思っています。
 
その夫のヴィラール(ウィリー)。
ピガールの筋書きどおりガブリエルは彼のゴーストライターで彼女が執筆した「クロディーヌ」は当時一大ブームに。
才能豊かなガブリエルと遊び人で要領の良いウィリー。
それをきっかけに2人には亀裂が入るのですが…何ともエキセントリックな夫婦です。
 
詳しく知りたい方は
シドニー=ガブリエル・コレット - Wikipedia
 

 

ムーラン・ルージュ - 暁千星  他-

 

実在の人物と言えば、この2人も。
シャルル (月城かなと)
ロートレック (千海華蘭)
 
ムーラン・ルージュは1889年、ベル・エポックの幕開けと共にモンマルトル地区にオープンしたキャバレーです。
創設者2名のうちの1人が実業家のシャルル(月城)でした。
 
カンカンダンスを特徴とした贅沢なショーを取り入れて他の施設とは一線を画したものとなり大盛況に。
当時ムーランルージュのショーの多くのポスターを描いていたのが有名なフランス人芸術家トゥールーズ = ロートレック(千海)です。

 ロートレック画
ムーラン・ルージュの舞踏会』1890年   

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ロートレックもまた波乱万丈な人生を送った人物です。
からんさん(千海華蘭)はロートレックをかなり研究されていると思います。
外見だけでなく、酒好きなところの演技(歩き方、喋り方)、この時代の匂いを感じさせる人物として万全の役作りでした。

彼の生涯を描いた映画もあります。→「赤い風車」
彼について詳しく知りたい方↓
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック - Wikipedia

 

『ピガール狂想曲』ではムーラン・ルージュで働く人々もたくさん出てきます。

振付師に光月るう、衣装デザイナーに紫門ゆりや、掃除婦に夏月都
ベテランの方たちは個性豊かな面々をユニークに、また味わい深い演技で毎回楽しませていただきました。

 

そしてダンサーのレオ役のありちゃん(暁千星)
このミュージカルではキラキラの担当です。
お芝居にはがっつり絡まず、ショースターとして素晴らしいダンスを披露してくれます。

ムーラン・ルージュのセンターで華麗にダイナミックに何度クルクルと回り続けてもブレない強い体幹、素晴らしいです。

 同じくダンサーに海乃美月天紫珠李
ダンサーチームは華やかでかっこよくて目は惹きますがセリフが少ないのは残念でした。
その分いつもに増して皆さんのダンスにパワーやエネルギーを感じ、数十年前に行ったムーラン・ルージュのショーを思い出しました。

 

↓この写真はムーラン・ルージュへ行った時に写したものです。 

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宝塚のレビューに慣れている私にとってはなかなか刺激的なショーでした。
今思うと本当に特別な夜を過ごしていたんですね。素敵な思い出です。
 

シャルルが作ったムーラン・ルージュのその後ですが、

火災や2つの世界大戦を乗り越えて130年以上経った今も尚、パリを代表する人気スポットの一つとして赤い風車は回り続けています。

 

最後はそのシャルルを演じた月城かなとさんについて。
 

月城かなと 


れいこさんが演じるムーラン・ルージュの創始者のシャルルはこの物語の要になっています。
良いも悪いも1番人間らしい人。

ムーラン・ルージュの華やかで煌びやかな金色の世界も、時の流れと共に経営が傾いていくセピア色の世界もシャルルが描いてきたものです。

ご覧になった方、れいこさんのシャルルは完璧ではなかったですか。

 明瞭な台詞回しと間の取り方は支配人としての貫禄と落ち着きを。

イケオジ的ビジュアルの完成度の高さ。
そのままレットバトラーが出来そうな。

そしてコミカル風味が大変上手くなられた…。
↑これは感慨深いものがあります。

↓ここからは私の思い込みです。
月組異動後、順風満帆なれいこさんですが、
何故かれいこさんのキャラとは真逆のヘタレ、おっちょこちょい、ずっこけ役が多いな…と感じてました。

もちろん様々な役に挑戦できることは素晴らしいことです。
しかし…これじゃ本来の持ち味を見失ってしまうのでは⁉︎
とまで飛躍して・・。

勿論そんなことあろうはずもなく全ての役から学んだ経験をしっかり蓄積されて、より魅力的な演じ手となられたことに感動しました。

歌もしっかりと心に響いてきました。

また珠城ジャックへのお願いソングのロングトーンの長さは日々進化してピガール注目のハイライトにもなってました。

アドリブもですが自然な形でコミカルさが板についてきたれいこさん。
数々の役を全力で演じてきたことが実を結んだような気がしてとても嬉しかったです。

 

夢を描いてたシャルル、経営者としてのシャルル、愛する人を見つけたシャルル、
色んな感情を持つ人間味溢れるシャルルを魅力的に演じたれいこさんは素晴らしかった。

ベルエポックという華やかで古き良き時代のパリ月城かなとが恐ろしいほどマッチして、この賑やかで楽しい物語にほのかな哀愁という彩を添えてくれました。
 

最後に

 

幕が上がる前にアコーデオン(だと思う)で曲が流れてきます。
「ムーラン・ルージュの歌」という曲です。

途中紹介したロートレック(千海・役)を主役にした映画「赤い風車」のテーマ曲で宝塚でもたまに歌われていますね。いい曲。

この作品は12夜という枠組みを大きく飛び越えて舞台をベル・エポックのムーランルージュに移したことや、
その中に女流作家のガブリエルを登場させたことは大胆で面白い発想だと思いました。

そこへ充実している珠城さんの月組メンバーが見事にハマった感じです。

今回長くなってしまい最後のショーについて書けませんでしたがまた機会があれば。

宝塚ならではの華やかさに今の日常を忘れて楽しむことができました。

月組さんはこの後の公演が次々発表されてますね。
珠城さん、美園さんが充実した宝塚での日々を送られますように。

ありがとうございました!

 

月・うさぎ