風のワルツ

宝塚歌劇、楽しくブログで綴ります。

宙組『アナスタシア』感想 - まかまど伝説になる

 

アナスタシア伝説をモチーフにした作品は悲しい物語が多い印象ですが、ミュージカル『アナスタシア』はロマンチックで明るくて皆が笑顔になれる作品です。

 

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           三井住友カード ミュージカル
           『アナスタシア』
       潤色・演出/稲葉 太地

 

11月19日に宝塚大劇場で観劇、今日LIVE配信を観ました。
少し感想を書き留めておきたいと思います。

 

アナスタシア伝説と史実と

 

ロシア革命で殺された皇帝一家の皇女アナスタシアは生きていた?
という伝説をモチーフにミュージカル化した作品。

元はアメリカのアニメ映画(1997)
2017年にはミュージカルになり、ブロードウェイで上演されました。
別々にですが真風さんとまどかちゃんも観られたそう。

映画が製作された時はまだアナスタシアの生存は謎に包まれていて色んな説が飛び交ってました。
2007年にはDNA鑑定によってアナスタシアは家族と一緒に銃殺されていたことが立証されています。

それでもアナスタシア伝説は今も尚生きて皆の妄想を掻き立てる素敵な物語としてこの先も語り継がれるのだと思います。

 

この作品は楽曲が素晴らしい!
特に主題歌の「Once Upon A December -あの日の12月」は何度もリピートしたくなる曲です。

 

<物語の始まり>

ペテルブルクの皇帝一家が革命の銃殺される。
生存していたとされる末の第四皇女アナスタシア探しが行われる。

詐欺師のディミトリィと偽貴族のヴラドは記憶喪失の娘アーニャを仕立て上げて報奨金をせしめようと皇太后のいるパリへと冒険の旅が始まります。

 

キャストについて

 

真風涼帆 / ディミトリ

舞台を大きなキャンバスに例えると素敵な絵になるであろうシーンがたくさんあります。

例えばペテルブルクの街、満点の星空の下の希望に満ちたディミトリとアーニャの絵、
パリの田舎町で笑み合う2人の絵、
列車の旅を描くのも賑やかで楽しそう。
 

ディミトリは詐欺師だけど悪い人ではなく、いい人だけど詐欺師という賢く強い男。
宝塚の男役なら演じてみたいと思うような役ではないのかな。

 

たくさんの素敵な曲が散りばめられていますが真風さんの為に書き下ろした楽曲「She Walks Inー彼女が来たら」もあり、真風さんの歌はどの曲もディミトリの心が込められていました。だから良かったです。

「My Petersburgー俺のペテルブルク」も素敵だし全編を通して歌に感動しました。

 

フィナーレでは色気全開、タンゴで娘役たちと踊るシーンはザ・男役!
娘役の中にはリリーそらくんもいます。

まかまど、デュエットダンスで豪華なキラキラの衣装を着る2人があまりに美しくて私の中で永久保存版です。

 

星風まどか / アーニャ

同じロシアの宙組作品『神々の土地』を観劇した時はまだ少女のような可愛いさばかりが印象的でした。

ヒロイン役を重ねるうちに実力にも磨きがかかり、今やタイトルロールを堂々と演じられる安定感と貫禄。

芯の強さと皇女としての品格を感じられるアナスタシア。
気が短くて時々癇癪起こすのも面白い。

巡り合ったアーニャ役はどこをどう切り取ってもまどかちゃんにぴったりの役になりました。

プリンセスのようなビジュアルと壮大な歌を歌えるのは大きな魅力ですね。素晴らしい。

 

芹香斗亜 / グレブ

渋さと哀愁を武器に物語のロマンチックを違った角度から攻め込んでくるグレブはロシア新政府の役人。
アナスタシアを愛してしまったことから職務を全うできずに悩めるグレブですが…。

 

キキちゃんは手を後ろに組み軍人らしく厳しい顔。
それだけに内に秘めた思いの熱唱には心揺さぶられます。

「The Neva Flowsーネヴァ河の流れ」は聞かせてくれます、圧巻です。

毎日のアドリブもお疲れ様でした。今日のアーニャお誘いも楽しめました。

今年はサパ、アナスタシアと真面目で硬質なキキちゃんを堪能しました。
そろそろ大らかで軟質な色気を放つチャラめのキキちゃんが恋しくなってきました。


桜木みなと / ヴラド

壮麗帝の美しいイケメン髭のずんちゃんも好きですが、
可愛いヴラドおじさん髭のずんちゃんも好きです。
とってもチャーミングなイケオジ。年齢不詳なところも良い、笑

真風ディミトリの相棒で、陽気な愛すべきキャラクター。

この3枚目よりの人物を歌もダンスも巧妙に、肩の力を抜いて柔軟に演じたずんちゃん、絶好調ですね。
リリーにギラつくずんヴラドが好き。2人の絡みが好きです。

ここ数年でずんちゃんの役の振り幅はぐーんと広がりました。
爽やかイケメンは基本形。
王子様役、女役、帝役、敵役、そしておじさん役まで卒なくこなす、凄いと思います。

自然体の演技がどんな色の役にも染まることができるのか、
次はどんな色の桜木みなとに会えるのか、楽しみです。

 

和希そら / リリー
そらくんが登場してから私はほぼリリーにオペグラをロックオン。
歌って踊って素晴らしいショースターに客席も凄い拍手でした。

リリーの魅力は到底言葉では伝えられず「百聞は一見にしかず」はそらリリーの為のことわざかもしれません、ぜひ劇場でご覧ください。
 
マリア皇太后の側近としては実にテキパキと有能に、ヴラドとはラブリーに、
明瞭でメリハリの効いた台詞回しは耳に心地良く響き、時々刺激的でとてもいい。

娘役というよりはパンチの効いた女役。
嫌味のない色っぽさが魅力の美人です。
ずんそらコンビは軽妙なのに濃厚で、絶妙な芝居で観客を引き込み物語を盛り上げます。

2度目のバウホール主演も決まり勢いづくそらくん。
宝塚での活躍はもちろんですが、ゆくゆくはミュージカルスターのそらくんを観てみたいと思いました。まだ遠い先の話。

 

寿つかさ / マリア皇太后

『神々の土地』と同じ、マリア皇太后役です。
声のトーンも御姿も皇太后。

心を通わせることのできるのはリリーだけという孤独な人。

これまでの歳月を思わせるような厳しい雰囲気は人を信じることを諦めた氷のような冷たさ、そんな負の心を感じさせます。

凛とした気品ある皇太后を美しく演じられてました。さすがです。

 

まかまど伝説

 

この作品は主演クラスの役が少ないために、本来もっと活躍されるはずの方も出番が少なくバイトが目立ちました。
ですがその中の1人、潤花ちゃんがオペラ座のバレエシーンが印象的だったように、出番は少なくても皆さんのそれぞれの役、シーンはしっかり印象に残っています。

 

この作品の1番のメッセージは「HOME, LOVE, FAMILY」ということです。
自分は誰なのか、帰る場所はどこなのか、愛する人は誰なのか。

家、愛、家族を見つける旅はディミトリとアーニャだけではなく、全ての人たち、グレブにとっても愛によって自分自身を解放できる旅だったのでは。

 

真風涼帆さん、星風まどかさん
2人の集大成となる素晴らしいミュージカルでした。

『アナスタシア』は宝塚宙組のまかまど伝説としてずっと語り継がれるでしょう。

 

宙・うさぎ