風のワルツ

宝塚歌劇、楽しくブログで綴ります。

月組『 ダル・レークの恋 』感想「月城かなと」素敵でした!

『ダル・レークの恋』感想です。

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2/27配信、3/18梅田ドラマシティで観劇しました。
月城かなとさん、海乃美月さんの感想です。
 

      グランド・ミュージカル
     『ダル・レークの恋』
        作/ 菊田一夫
        監修/ 酒井澄夫
        潤色・演出/ 谷貴矢

 

ダル・レークの恋

 

愛し合う男女がボタンの掛け違いで上手くいかず、女が真実の愛に気づいた刹那に男が去っていく…
というラストで思い出すのはあの名作。

壊れたものを繋ぎ合わせるより新しかった時のことを追憶していたいと、
夕映えの中レット・バトラーは去って行きました。

男が去っていく姿はやたらかっこよくて、その切ない幕切れは憎らしいほどいつまでも胸に残るものですが、
ダル・レークのラッチマンもまことの愛を貫ぬこうと去って行きました。


突然別れを告げられる女はどのように気持ちを断ち切れば良いのでしょう。
しかも。
舞台はカシミールの「水の都」スリナガル
「スリナガルの宝石」「花の湖」と言われるロマンチックな湖ダル・レークでの恋。
相手は貴公子ラッチマン。

完ぺきなシチュエーションのもとに芽生えたひと夏の恋は、いつまでも女を過去の記憶に封じ込めてしまいそう。

こわい…!
 
カマラがラッチマンを忘れられずにパリの街を彷徨う姿は憐れで哀しくて、
その後の彼女にどんな救いがあるのか。
想像を掻き立てられるところにこの物語の奥行きの深さ、面白さがあります。

2人の別れからラストへ向けての流れが秀逸ですね。永久保存版。

唐突ですがトート(エリザベート)は登場シーンで、ラッチマンはラストシーンでどれほど惹きつけられるか私の注目ポイントになっています。
ダル・レークでは演者がラッチマンの人生をどれほど生きてきたのか全ての答えがラストシーンに表れるように思います。
 

ラッチマン 月城かなと

 

ラストシーンのれいこさんの歌は期待以上に彼の心情を語っていました。
余韻に浸ると言いますが今もなおダルレーコ(湖)にゆらゆら揺れている感覚です。
 
ラストパーティの時よりさらに魅せる力が大きくなり骨太な演技にぐいぐい引き込まれました。
歌の表現力が豊かになり、艶のある声、無理のない発声、高低音域の幅も広くて心地よく響き上手いと思いました。
 
特に印象に残る2シーン。
 
◆第1幕、ダル・レークの祭りのシーン。
街の人たちの言葉に戸惑う2人には未来は見えず…
2人の複雑な心境が伝わってくるシーンです。
この時が2人の別れを決定づけたのではないかと。

前夜はあの例の幻想的な湖畔での谷先生曰く大変大人のラブシーン。はい。
ラッチマンはこの夜に全てをかけたのでしょう。

しかし自分の身分を捨てきれなかったカマラ。
自分自身を愛してほしいラッチマンが、カマラを見送る姿が盛大に哀愁を帯びていて切なくなる場面です。

ここへきても自分の身分をあかさないラッチマン。
意思の強さは彼の男の美学でもあるのでしょうね…。
 
◆第2幕、7年前のパリ。
 
小雨のパリ、ナイトクラブ、黒いタキシード、グラス片手、シャンソン、イケメン

このキーワードのパズルを完成させると「月城かなと」になります。
魅力的でしたね、かっこいい。
ここのオペグラ⤴︎率はかなり高かった。
れいこラッチマンがグラス片手に歌うシャンソンは令和ver.のオリジナル曲、何度もリピートしたくなります。ここも永久保存版。

放蕩息子ラッチマンは決して純朴な王子様ではなくちょいワルな面もあります。
ここでは彼の父親との関係や詐欺師との勝負など、騎兵大尉とは別の顔で魅了してくれます。
このシーンは身分や家柄だけでなくラッチマンの本質を知る上で大切な場面です。
 
ラッチマンは難しい役ですね。
静かで重く、華やかで優雅で逞しく、強くて切ない。
数々の仰々しいセリフもサラッと言える技量がなければ心に響かないでしょう。
 
れいこさんは、ここ数年の大劇場ズッコケ役シリーズ(←まとめ方が雑^^;)から、ピガールでは本来の月城かなと路線へ、そしてダル・レークで魅力全開。
 
ラッチマンは今の宝塚でやはりれいこさんが1番しっくりくるように思います。
白いラッチマンも黒っぽいラッチマンも魅せられるれいこさんは決してラッチマンという役に負けてませんでした。

恵まれたビジュアルも大きく、ダル・レークの世界を理想どおりに作ってくれて素晴らしいです。

東京初日から連日のように「美」という言葉が飛び交っていましたが、れいこさん登場の度にオペグラがいっせいに上がるのは圧巻でした。

ピガールからダルレークにかけてもの凄い勢いと強さを感じます。
 

カマラ 海乃美月

 

ヒロインのカマラ役の海ちゃん(海乃美月)とは息もぴったり。
ラストパーティでもコンビを組み、アンナカレーニナでも夫婦役でしたね。
2人の安定感は確かに抜群です。
インドのお姫様の綺麗な衣装が良く似合っていました。

ラッチマンを求めて彷徨う姿は悲しさそのものです。
心にぽっかり空いた穴は誰にも埋められず、
眠りにつくまでラッチマンを思い、目覚めた瞬間からラッチマンを思うのでしょう。
友達と話していても食事をしていても誰かと踊っていてもラッチマンを思うのでしょう。
 
では彼と出逢わなかった人生が幸せだったのか、
傷つきボロボロになっても彼女の人生を彩る恋は必要だったのか、
カマラにさえわからないかもしれませんね。

インドのお姫様という私たちには想像の域を超えた世界の女性であっても人を愛する気持ちは同じ、どこからやり直せば上手くいったのだろうか…などとあれこれ考えたりしました。
大きく揺れるカマラの気持ちや悲哀には泣けました。海ちゃん良かった。

 

あと新しく登場した水の青年(彩音星凪)、水の少女(菜々野あり)のダンスはとても美しくて、作品を幻想的なものにしていて素敵でした。

 

巡り会う

 

頭で思うことと心と行動が上手く処理できないことはよくあります。
ラッチマンとカマラもそうなのかなと。
愛と憎しみは時代を超えて普遍的なテーマですね。

2人は高貴な身分の役がお似合いで、宝塚の伝統的な王道作品に大人の正統派コンビは見事に合ってました。
観劇後は宝塚らしい良い舞台を観たなぁと多幸感に包まれましたよ。

私のお隣は初演をご覧になったお二人連れで舞台を懐かしんでおられました。
懐かしい舞台に再び巡り会えることは宝塚の良いところです。

最後に。
れいこさんが頼もしかった!
作品の世界観を大切にしつつ「月城かなと」の世界観で描くラッチマンは大変魅力的でした。
れいこさんのこれからがますます楽しみです。

 

月・うさぎ