『ロミオとジュリエット』感想です。
『ロミオとジュリエット』
原作 / ウィリアム・シェイクスピア
作 / ジェラール・プレスギュルヴィック
潤色・演出 / 小池 修一郎
演出 / 稲葉 太地
先にBパターンを息子K(星ファン) と、
次にAパターンを息子T(星 初観劇) と一緒に観劇しました。
Kは別日にAパターンも観劇しています。
「愛と死に彩られた5日間の短い恋の物語」を日頃は親と込み入った会話もしない20代の彼らがどんな感想を持つのか楽しみでした。
5日間を生きる
ロミオとジュリエットの2人だけに焦点を当てると、
1日目
キャピュレット家の仮面舞踏会に忍び込んだロミオがジュリエットと出会う。
バルコニーでプロポーズ
2日目
教会で結婚式をあげる。
マキューシオが殺され逆上したロミオがティボルトを殺してしまう。
3日目
大公はロミオをヴェローナから永久追放に処す。
2人はジュリエットの部屋で最初で最後の朝を迎える。
ジュリエットは父親にパリス伯爵との結婚を強要される。
4日目
ジュリエットはパリス伯爵との結婚を逃れるために神父に相談して偽装自殺を計る。
5日目
真実が伝わらずジュリエットが本当に死んだと思い込んだロミオが自殺、目覚めたジュリエットも後を追う。
この5日間に永遠の愛を封じ込めて2人は悲劇的な結末を迎えます。
彼らと同世代の10代の頃に原作を読みましたが、どのように感じたのか昔過ぎて覚えていません。書き留めておくものですね。
『誰がために鐘はなる』の3日間の恋にも衝撃を受けましたが、儚さや刹那(さ)はより鮮烈に心に刺さることがあるようです。
ロミオ / 礼真琴
キラキラ輝く目、甘い顔だち、登場シーンからロミオを感じてハマり役でした。
仲間と騒ぐ若者らしい陽気な面も不安に怯える影の部分も歌での表現が素晴らしかった。
数々の難曲を歌い上げてさすが歌の人、特に「僕は怖い」は圧巻でした。
衣装はポスターや制作発表で見た時には従来の方が美しく感じていたので心配でしたが、実際舞台で見るとストーリーに引き込まれ違和感を感じず、むしろ似合っていたように思います。
トップと役柄の相性が良いと気持ち良いです。
1つ例を挙げると望海さんとファントム役がピタッと合った時に感じたような爽快感がありました。
特別に歌唱力至上主義ではないのですが、表現力の豊かな歌は作品に浸れるという点で大きな魅力の一つではあります。
素晴らしいロミオだったね、これは3人共通の感想。
星組ファンKの自慢のトップです。
ジュリエット / 舞空瞳
エル・アルコンの女海賊ギルダは今までと少し毛色の違う役でチャレンジだったと思います。
愛らしくて自分の気持ちに素直なジュリエットはひっとんの持ち味を生かせる役ですが、プラス芯の強さや情熱的な面も感じられ、ギルダ役の経験が生きているように思いました。
歌声も綺麗で表情豊かなジュリエットはとっても魅力的。
もっと伸びしろがありそうで楽しみです。
まだまだ瑞々しいことなこも一作ごとにコンビの形が作られていくと思います。
この大作をやり切った後は舞浜アンフィシアターですね。
最後のデュエットダンスも素晴らしかったので、歌って踊れるショースターコンビのさらなる飛躍になりそうです。
愛月ひかる
まずビジュアル。ティボルトも死も出来上がってました。
それは男役愛月ひかるの顔と言えると思います。
一躍有名になった「愛ちゃんの死」は群衆の中でもどこにいても圧倒的な存在感で死の香りを放ち、ティボルトでは危険な香りを放っていました。
Bパターンを先に観劇した私とK、2人して終演後に愛ちゃんの死に衝撃を受けたことを確認。
どこまでもせおっち贔屓の息子K「セリフのない愛ちゃんの死の存在が凄すぎてティボルトも絶対凄いと思う。せおっちのティボルトもこんなに凄いのにもっと凄かったら…(どうしよ)」←「凄い」連発
大丈夫。役替わりを楽しもう。それぞれに「凄い」ティボルトがある。
トップとは真逆の個性を持っている愛ちゃんがいることで今後の星組作品の幅も広がりそうですね。
次回別箱は2度目の東上公演となる『マノン』
3年前の東上主演『不滅の棘』からますます大人の色気が増した愛ちゃんの主演作に注目です。
瀬央ゆりあ
役替わりのティボルトとベンヴォーリオは敵同士の役。
切り替えが難しいと思いますが、せおっちの演技は真っ直ぐ心に響いてきます。
特にベンヴォーリオ最後のソロはロミオへの愛が溢れていて泣けました。
2役とも大きな役で『眩耀の谷』からせおっちが担う役割は大きくなってきています。
琴ちゃんの明るいパワーと愛ちゃんの艶やかな男っぽさを兼ね備え、赤にも青にもなれるところが強みかと。
息子Kはこの公演でいろいろ考えることが多かったようです。
K「せおっちティボルトは最高やったけど愛ちゃんはやっぱり存在感が強かった。
上級生からいい刺激を受けることは有難いし、せおティボは東京ではもっと深化しそうな気がする。
ベンヴォーリオは最高を超えた。歌に心がある。声も良い。歌も良い。顔も良い。全て良い。せおっちのトートが見たい!」
大絶賛ですが(笑)、
せおっちに関しては舞台映えするビジュアル、公演ごとに進化する技術、心のこもった演技に私も大きな期待を寄せています。
乳母 / 有沙瞳
そのKはくらっちファンでもあります。
乳母役に感動してますます好きになったそう。
そしてもう一人の息子T。
こちらは珠城さんのファンで月組公演の時だけ現れます。
Kの希望(圧)もあり今回は星組初観劇。
舞台に感動したTも美人の乳母役の人が好きだと。
なんと!兄弟揃ってくらっち大絶賛!
年齢的には叔母さん役になりますが、見せ場は多くて重要な役どころ。
ジュリエットを愛する乳母役の心情豊かな演技と歌は涙を誘いました。
(真面目な)Tも(ちょい軽めの)Kも虜にしたくらっち最強です。
『マノン』では2人まとめて止めを刺されるでしょう。簡単に。
綺城ひか理
長身で立ち姿が美しく歌も上手い。
パリス伯爵とベンヴォーリオと色の違う役をしっかり演じ分けて既に星組になくてはならない存在ですね。
パリス伯爵は大金持ちでいい人かもしれないけれど、若い娘がときめくタイプの男ではない…かと言って渋さもなく軽そう(パリスごめん)…
なイメージの男を上手く作り上げていたのはさすがです。
対するベンヴォーリオは生き生きとした若者の姿が投影されていて、あかさんの描くベンヴォーリオ像がしっかり出ていました。
瀬央さんとの役作りの違いがはっきりしていて役替わりの面白さを感じました。
天華えま
私はマキューシオという人物にかなり興味があります。
ヴェローナ大公の甥であり身分は高いものの口が悪くて俗っぽい。
王子様ロミオとは友達でも真逆のタイプ。
マキューシオが死からマスクを受け取り、ロミオはそのマスクをつけてジュリエットに出会う。
死の影が3人につきまとうのですが、そのマキューシオと死を演じるぴーすけ。
マキューシオの持ち歌「マブの女王」は彼らしさが出ていて良かったです。
「ロミオにキレるところも死に際の演技もぴーキューシオ最高やな!」by K
ぴーすけの「死」もダンスの表現力が上手く、あと表情、特に目が印象的。
あの目に射止められたらもう終わりだなと思わせるような目です。
かなり研究されたのではないかな。
極美慎
パリス伯爵とマキューシオの役替わり、爽やかなイケメンぶりが話題でした。
ビジュアルだけでなく慎くんの伸びやかな演技が好きだと言いつつ、長身で華のある美しさには目を惹かれます。
パリス伯爵は全くイメージできなかったけど陽気で脳天気な雰囲気がよく出ていて意外とツボでした。
マキューシオも思ったより骨太な役作りで、ふと新公があればロミオ役だったかもと残念に思いました。
キャスト一言づつ
天寿光希 / 娘への思いが溢れる歌が感動的でした。
夢妃杏瑠 / 美人のママさん、ティボルトとパパへ向ける視線が違ってましたね。
美稀千種 / 穏やかで優しそうなのにキャピュレットには攻撃的なところが素敵。笑
白妙なつ / 安定した歌声でした。
小桜ほのか / エトワールの歌声が素晴らしい。役が小さくて残念。
輝咲玲央 / 厳格で威厳のある大公。
遥斗勇帆 / 歌も演技も貫禄ありました。
英真なおき / 物語の肝心要となるロレンス神父。じゅんこさんは4度目、安定の神父様。慈愛に満ちた眼差しと愛溢れる歌声に感動しました。
宝塚ver.オリジナルナルで小池修一郎先生が創られた「愛」
「愛と死の相剋」をテーマに追っていく形を撮られたそうですが、この発想は本当に素晴らしかったですね。
「愛」を演じた2人(碧海さりお / 希沙薫) は男役ならではの長身を生かして死と向き合う柔らかくて美しいダンスで「愛」を表現してくれました。
「愛」があるから
どうすれば2人は死なずにすんだのかとTとKに投げかけてみました。
ロミオとジュリエットに「愛」がある限りはどうやっても「死」を避けることはできないのではないかと。
なるほどなぁ。
役替わりはどちらもバランス良く考えられているので楽しい観劇になりました。
エネルギッシュで美しい世界観を楽しめることは幸せですね。
ありがとうございました。
星・うさぎ