月組公演、お芝居、ショーともに素晴らしくて楽しくて、初めて宝塚歌劇を観劇される方にもぜひお勧めしたい作品です。
まずショーの感想を少し書いてみます。
タイトルの『WELCOME TO TAKARAZUKA-雪と月と花と-』以下略してWTTと記します。
監修/坂東 玉三郎 作・演出/植田 紳爾
10月1日(B)、9日(A) 観劇しました。
雪月花ーせつげつか
幕開き、銀橋にズラリと並ぶ月組生、待ちに待った舞台に感動します。
真ん中の珠城さんのお顔を見ると嬉しくて、たま様〜と心の中で叫びましたよ。
宝塚ならではの華やかな和物レビューは豪華絢爛、目もくらみそうな美しさです。
例えばチョンパから始まるプロローグ
チョンパとは、
拍子木(柝)の“チョン”という音と同時に、“パッ”と舞台上の照明が一斉に入ると、銀橋はじめ、本舞台、花道に豪華な衣装を纏った出演者たちが登場。そのさまは夢夢しいことこの上なし。これは、日本物レビューの幕開きで多く用いられる「チョンパ」という手法。宝塚公式ホームページより
ほんと夢夢しい。
WTTは洋楽に合わせて舞う和と洋のコラボ(これも宝塚の特徴)したレビューなので、世界観に入りやすいと思います。
すみれ色の着物を着た106期生、延期になりましたが華やかなレビューでのお披露目となりました。本当に良かったです。
光月るう組長の歌舞伎さながらのご挨拶が印象的。優しさに溢れた温かみのある声・・いいですね・・好きです♡
106期生、今日組配属が発表されました。大きく羽ばたいて欲しいですね。
さてタイトルの中の雪と月と花と
宝塚の和物レビューにもよく使われますが、組の名前にもなっていますね。
「雪月花」の語源は唐の詩人、白居易の詠んだ詩で、宝塚の組名もここから。
やはり雅です、タカラヅカ。
詳しくは→雪月花 - Wikipedia
日本では古くから花も雪も月も身近な自然の産物として、四季折々の自然と寄り添って生きてきました。
そこて観劇前に私も自分が感じる雪と月と花の美しさをイメージしてみました。
予習、ってやつですか。
雪
冬の始まりを告げる初雪は淡くて手のひらに消えていく儚さです。やがて降り積もり美しい雪景色となるのですが。
雪が降るとこの私には人生が悲しくも美しいものに憂愁に満ちたものに思える、と詩によんだのは中原中也でした。
月
月の光があまりに美しくてただ静かに眺めていたいと思う秋の夜。
昔の人も同じ月を見て何を思ったのだろうと感傷に浸ったりしますが、月を愛でるのは日本の文化ですね。私のアメリカの友人はアメリカでは月の鑑賞は重要ではないと不思議なようです。
花
花が咲き始める春は喜びの季節です。名もない花でさえ美しくて可愛くて芳しい香りに癒されます。
ちなみに万葉集で1番歌われている花はハギが142首、次がウメで119首と。サクラも愛されてますがこの時代のお花見は春のウメと秋のハギでした。
こうして書き出してみると、四季の移ろいを感じやすい日本ではどの時代でも雪月花の自然が身近で大切なものであることがわかります。
ではまず「雪」から。
雪の巻 / 松本悠里
この公演で卒業される専科の松本悠里さん。
曲はヴィヴァルディの「四季」より「冬」
この選曲は最高に良かったです。帰ってから何度も四季を聞きました。
雪の降る朱色の千本鳥居を背景に、真っ赤な着物に傘を持った松本さんが登場すると空気が一瞬にして変わります。
昔と変わらぬ日本人形のような愛らしさには驚くばかり。
幻でしか会えない男においおい泣いている姿が切なくて。
そんな女の情念を舞いで表現される松本悠里さんお見事です。
カゲソロの美しい歌声は白雪さち花さん。
歌詞に出てくる雪しまきとは激しく雪が降ること、吹雪のことですね。
1988年花組公演『宝塚をどり'88』で松本さんは「雪しまき」という題目で踊られています。
朱の鳥居、赤い着物、和傘は同じ、音楽や演出は少し違いますが。
この作品はニューヨーク公演『TAKARAZUKA』でも披露されました。
6000人ほど入る大きな会場で満員のお客さんのスタンディング・オベーションに映画の世界のヒロインになったようだったとご自身が語られています。
松本悠里さんにとって思い出の雪しまきを題材にした舞で有終の美を飾られるのですね。
64年に及ぶの宝塚人生、宝塚の宝です。
最後の日まで私たちを魅了し続けてくださることでしょう。
月の巻 / 珠城りょう
月の男・珠城りょう、月の女・美園さくらのトップコンビを中心とした郡舞です。
曲はベートーヴェン、ピアノソナタ「月光」をボレロをアレンジしたもの。
圧巻の華やかさ美しさは宝塚日本物レビューの醍醐味ですね。
新月から三日月、十三夜と満月まで月が満ちていき、月のパワーを感じさせる力強い舞に感動です。ここはやはり珠城さん素敵だな。
まだ研13の若い珠城さんを見ていると早すぎるトップ就任は勿体なかったなぁと思います。
たまさく月組は今まさに素晴らしい充実期を迎えていてとても安定感があります。
話がそれましたが、この場面は珠城-美園、鳳月-海乃、暁-天紫というコンビが中心となった荘厳な郡舞は見応え十分。
さくらちゃんは和物メイクが格段に良くなりとても綺麗で舞台映えします。
ちなつさんは品があって色気もあり申し分のない若衆、ありちゃんは爽やかで華やか。
海ちゃんの和洋問わずの安定感、珠李ちゃんの役付きの良さを感じました。
花の巻 / 月城かなと
鏡を見ながら一人の美しい男役が誕生していく様子が表現されています。
曲はチャイコフスキー「くるみ割り人形」より「花のワルツ」
美しい若衆、花の男に月城かなと
鏡の男に風間柚乃
れいこさんの着物の着こなしや所作を見ていると、やはり経験は大きな財産になるのだと確信します。
加えて堂々としていて舞台映えする美しさ。
おだちんもスッとした男前で2人の息も合っていました。
この公演ではれいこさんの歌が多くて歌唱力もグンとレベルアップしていて、ショー、お芝居ともに強く印象に残りました。
そんな頼もしいれいこさんと、この場面で最後に見事な男役となった花の男がリンクしまして…やっと月城かなとらしい役が巡ってきたと嬉し泣きしております。(個人的にれいこさんの和物とイケオジが好みなので)
ピガールの感想はまた別に書きたいと思います。
最後に一言
さて、フィナーレでもう一度松本悠里さんが登場されて踊られる場面、カゲデュエットのきよら羽龍さんと咲彩いちごさん、素晴らしい歌声です。
きよら羽龍さんは少し大人しめの印象を持ってましたがこの公演で華を感じました。
何より声が綺麗で大変歌うまなのでダル・レークのヒロイン候補になるのではと思いました。
新公が中止になったことは本当に残念なことです。
劇場で観るWTTが素晴らしいだけに、今のこの状況が残念でなりません。
宝塚では日本物のショーはそんなに頻繁にはありませんし、とりわけ今回は植田紳爾(作・演出)、坂東玉三郎(監修)、そこへ松本悠里(卒業公演)、106期生(お披露目公演)と大変貴重な舞台です。
何よりも中身が詰まった見応えのあるレビューでした。
とてもいい舞台を観せていただいたと感動しています。
月・うさぎ