風のワルツ

宝塚歌劇、楽しくブログで綴ります。

花組『A Fairy Tale -青い薔薇の精』感想ー明日海りお

 

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明日海りおさんのラストステージとなる『A Fairy Tale -青い薔薇の精』の観劇感想です。
内容にも触れているのでお気をつけください。

 Musical『A Fairy Tale -青い薔薇の精』
 作・演出 / 植田 景子

 

黄泉の帝王から精霊へ


黄泉の帝王から始まってパンパネラを経て、最後は薔薇の精で幕を閉じるみりおさん。

トップ就任時はまだ若くて、ソフトで爽やかなフェアリー要素が持ち味のように感じていました。
なのでトート、光源氏と、いきなり妖気や色気などの妖艶さを求められる役を演じるのは大変だったのでは…と思います。

そして男役として円熟期真っ只中の今、青い薔薇の精になって宝塚を去って行かれるのですね。


えも言われぬオーラを放ちながら、この世の人間のようになってはならない。
全く違和感を感じさせずに自然に舞台で歌い踊り精霊エリュとして生きる明日海りおさん。

物語の中だけではなく、宝塚に美しく咲く薔薇のような人です。

 

大人のおとぎ話

 

ストーリーは大人のためのおとぎ話、ファンタジーと言われているとおりです。

ヒロイン、シャーロット(華優希) の母フローレンス(城妃美伶) が描いた1枚の絵画があります。

この絵画に描かれた薔薇が咲き乱れる平穏な庭で、かつて幸せな一家が過ごしていた。

小さな女の子シャーロットの側にはいつも薔薇の精エリュたちがいて、そんな幸せが当たり前のような日々。

少女はいつしか美しい娘に成長していく。

形あるものがいつか壊れてしまうように、幸せな日々は長く続かない。
幸せだった家族の形が変わっていきます。

シャーロットに忘れられたくない “白い薔薇の精エリュ” は自然界の掟を破り、罪に堕ちてこの世に存在しない “青い薔薇の精” に変えられてしまい、美しい庭は霧に閉ざされてしまう。

 

明日海りおに求めるもの

 

私と観劇が別日だった妹とは作品の感想も分かれました。
分かれたというより、観る視点が違っていたのかな。

ラストステージとなる明日海りおさんに何を求めるかで感想が違ったようです。

みりおさんファンの妹は壮大な物語だけにストーリー展開や演出に少々物足りなさを感じたようです。
大好きなスターの最後の舞台に思い描く理想の形があるのでしょう。

 

今回私は作品に関して予備知識なしで観劇しました。

ストーリーは、目に見える現実社会と目に見えない異次元の世界と2つが交錯するのですが、
私はその中でただただ精霊として生きるみりおさんの美と歌を堪能し、耽美な世界観に浸る・・ということだけに意識を傾けました。
それ以上のことができなかったというのが本当のところです。

物語は喜びも悲しみも詰め込んだ一つの抒情詩を読んで(見て)いるかのようでもあり、様々な形の愛も織り込まれていました。

例えば、庭師のニック(水美舞斗) が醸し出すフローレンスへの恋心など、言葉には表さずに伝わってくるところがとても素敵で・・。

あの庭には色々な人の思いや歴史が刻まれていているのだと思うと、ある種切ないノスタルジーをも感じられました。

 

また、可愛い精霊たち、美しい衣装、舞台セットなど、目で見て楽しむ要素がたくさんありました。 

最後のシーンの白い薔薇の衣装を着たみりおさんは本当に素敵です。

演出云々より、この世で見ることのできない不思議な世界の中で輝くみりおさんを観ることができたことに感動しました。

もう一度観る機会があるので、次回は作品についてもう少ししっかり観たいという気持ちと、
麗しいみりおさんを目に焼き付けるという、このままの感覚でも良いかなという気持ちがあります。

 

お伽話なのであまり現実的で難しいことを考えると興醒め、美しい世界観に浸りたいと思います。

 

ハーヴィ(柚香光)への言葉

 

光ちゃん (柚香光) の 気負いがなくサラッとした演技が、真面目でユーモラスな植物学者という役柄に合っていて良かったです。
シックな衣装も似合っていて素敵だったし、光ちゃんの大人のドラマが観たいと思いました。

 「君なら美しい花を咲かせられる」エリュからハーヴィへの台詞。
そのまま、みりおさんから光ちゃんへの言葉ですね。

 

気になった生徒さん

 

華ちゃん(華優希)  
少女から老年期までお芝居が自然で上手いと思いました。
DVを受けていた頃の夫婦のやり取りが特に素晴らしかったです。

あきらさん(瀬戸かずや)
役柄にぴったり、歌も歌えるし貴重な存在ですね。

マイティ(水美舞斗)  
出番は少なく感じましたが、とてもいい役です。
繊細な心の機微を演じるお芝居も良くて印象に残りました。

しろきみちゃん(城妃美伶)  
気品溢れる貴婦人の姿は美しくて溜息が出るほど。
大人の女性を演じられる素敵な人なので卒業が残念です。

ほのかちゃん(聖乃あすか)  
セリフなしで白薔薇の精としてダンスや表情で想いを表現するところが美しくて素敵!

音くり寿ちゃん、妖精プルケ役、すごく可愛いんです。
お芝居も歌も上手でとっても好きな生徒さんです。
 

薔薇の精は永遠

 

花を育てる時に音楽を聞かせたり声がけをすると、普通より見事な花を咲かせると言われていますが、花にも心があり精霊が宿っているのかもしれませんね。
大人もそんな夢を見られるのかもしれません。

 

シャーロットとの念願のの再会を果たしたエリュですが、おばあさんになった彼女に力強くまっすぐな目で「君は何も変わらない」と言います。

年を取らない美しい薔薇の精エリュ・明日海りおの心に残った台詞です。

 

花・うさぎ 
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