風のワルツ

宝塚歌劇、楽しくブログで綴ります。

星組公演『エル・アルコンー鷹ー』感想〜ダーティーヒーロー礼真琴 / キラキラ愛月ひかる

 

人はなぜダーティーヒーローに惹かれるのだろう。

悪の滅びの切なさと美しさに魅了されるのか
自分の中のダークが覚醒して騒ぎだすのか…^^;

エル・アルコンのティリアン・パーシモン礼真琴

完全無欠のダーティーヒーローです。
 
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11月26日に梅田芸術劇場で観劇、今日28日にはライブ配信を観ました。 
26日には原作者の青池保子氏がご観劇でした。

    『エル・アルコン-鷹-』
 「エル・アルコン-鷹-」「七つの海七つの空」より

      原作:青池 保子(秋田書店)
       脚本・演出/齋藤 吉正

 

ドラマチック強化発案 ⁉︎

 

原作を未読で初演も未観劇の方も多いと思いますが、
ストーリーの展開を追いながら登場人物の顔と名前を一致させたり、
繋がりや関係性をつかんでいくのは難解ではなかったですか。
 

観劇前に私も何年かぶりに原作を読んで初演の映像を観ました。

漫画は順を追って登場人物を把握していけますが、
舞台は限られた時間内に壮大なストーリーを詰め込むことになります。
なので全く予習なしの初見の方はかなり集中力が必要かなと思いました。


もしティリアンの今に至るまでの背景をもう少し描くことができれば、
ダーティーヒーローの誕生と、悪の華の散り際がさらに鮮明に印象づけられ、
よりドラマチックになったのでは…

と、そんな妄想もしてみました。

 

礼真琴 / ティリアン


かつてティリアンそのものだった安蘭けいさん。
エルアルコンは星組の伝承作品になるのでは…と思うくらい私の中で安蘭ー礼のティリアンが結ばれています。いい意味で。
 
観劇前から、聞かせる歌が多く大立ち回りのシーンもあるティリアンは歌うまで躍動感のある琴ちゃんにうってつけの役だと思ってましたが、実際そうでした。

 

若くて優しい顔立ちの礼真琴、
冷酷で色気ダダ漏れのティリアンをどのように魅せるのかーは注目でしたが、
最強の低音ボイスでセリフ、歌を表現し堂々とこの役に勝負したことは素晴らしいと思いました。

 

ティリアンにとって人は利用するもので、邪魔になったら切り捨てるもの。
憎いほどのワルです。
そんな悪を琴ちゃんはよく研究されていると感じました。仕草も表情も。

以下は、ティリアンのいびつな愛について。

 

まずペネロープ(有沙瞳)、
彼は彼女にひとかけらの愛情もない。
「ここに来なさい」
導かれるままに恋に落ちていくお嬢様。
彼は罪のない彼女に愛情はおろか温情すら待ち合わせません。

嫌悪している義父の愛人シグリット(音波みのり)とも戯れた過去。

 

彼の心はずっと渇いていて満たされることはなく。

親の愛に飢えていた。
父親からは愛されず疎まれ、母親は息子の姿ではなくその先の愛する男ジェラードだけを見つめていました。
ティリアンは血の繋がった父親かもしれないジェラードに憧れを抱いていたけれど。

結局、彼にとって家族は愛ではなかったのです。

 

そんな彼が初めて心惹かれたのが女海賊ギルダ(舞空瞳)。
彼の人生に愛があって良かった。

彼が七つの海七つの空を見せようと言ったのは、ギルダと腹心のニコラスにだけです。

最後に大海原で愛するギルダとニコラスと共に、彼の全てだった旗艦エル・アルコンで果てることは彼にとってふさわしい幕切れだったのかもしれません。

ティリアンに海があって良かった。
たとえ海が彼の悲劇の象徴だとしても、最期は全てから解放されて海の中で眠るのです。

 

舞空瞳 / ギルダ

 

強く逞しく美しい女海賊ギルダに舞空瞳。
フランス貴族で誇り高く、身体も恐らくは心も傷だらけの女。

 

メイクも強めに迫力ある演技で思っていた以上に戦士でした。
ティリアンとの戦闘シーンも2人の動きがシャープで無駄がないのはさすがでした。

歌はかなり高音で難しそうな曲ですがほぼクリアされていたと思います。
中盤で礼ティリアン、愛レッドと3人で歌う「七つの海七つの空」はとても良かった。

 

強気の海賊である前に1人の女性であるギルダはティリアンへ惹かれていきますが、琴ちゃんに比べるとなこちゃんの色気はまだ少なめ。
突然色気ムンムンになるのも怖いので 笑、男勝りなギルダはあれくらいでいいかもしれません。

ギルダは海賊としての顔と女としての顔を持つ難しい役でした。
全体的には好演されていたと思います。

 

愛月ひかる / レッド

 

ティリアンとは好対照に正義の心を持つ青年レッド、愛月ひかる。
好青年から海賊へと、おいしい2番手役だと思います。

ダークな役が多めの愛ちゃんの正義感溢れる青年役は楽しみでした。
元々は黒い役も白い役もどちらも似合いますが、これほどぴったりとは。
若々しくて爽やかな役作りでした。

そして逞しい。そりゃジュリエット(桜庭舞)も一目惚れするでしょう。
特にあの流れで(→結婚の儀) 突如現れたレッドは彼女にとって王子様です。

 

復讐のために海賊になっても正義と良心が理念とはかっこ良すぎですが、信念を持つ彼には人を引き付けるカリスマ性を感じます。ティリアンもカリスマ性抜群ですが。

愛ちゃんのレッドは包容力と信頼感に満ち溢れていてとても良かったです。

 

もしレッドが主役の『七つの海七つの空』だけを舞台化していたら、琴ちゃんがレッドで愛ちゃんはティリアンと思いますが、逆の役になってもしっくりくる2人は凄いです。

 

 

青池保子さん「僕は君を忘れない」

 

『エルアルコン』原作者の青池保子さん、

以前フォロワーさんが「木原敏江〜エレガンスの女王〜」
という本を紹介されていて、私もすぐに購入しました。

タイトルの木原敏江さん、宝塚の『アンジェリク』大江山花伝』『紫子』などの原作者です。
カラー写真満載で美しさは
まるで宝塚の世界です。

著書の中に、青池保子さん、木原敏江さんと『ポーの一族』の萩尾望都さんのスペシャル鼎談があって、宝塚の話も当然ながら出てきます。

これね!! ↓

prtimes.jp

青池先生は『エルアルコン』が宝塚で舞台化されて豪華な舞台になって感激されたそうです。

初演の時、宝塚大劇場のラストでキャプテン・レッドが何も言わないから、演出家の齋藤吉正先生に「僕は君を忘れない」と入れて欲しいと言ったら東京ではそのセリフを入れてくれた、齋藤先生はちゃんと聞いてくれたと言われてました。

 

作者には思い入れのあるセリフやシーンがあると思うので、そこは舞台で生かされて欲しいですね。

今回の舞台でもしっかりと聞きました。
「僕は君を忘れない。」

 

印象に残ったキャスト

 

有沙瞳
切ない役が似合い過ぎるみほちゃん。
美しくて気位の高いお嬢様。
ティリアンを愛して身を滅ぼしてしまうペネロープはハマり役でした。

綺城ひか理
ジェラードはティリアン一家の運命大きく変えた人です。
ティリアン自身も多大な影響を受けた。
物語の要となる役を渋くクールに手堅く演じられる頼もしいさん。

天華えま
エドウィンは婚約者ペネロープをティリアンに奪われてしまう。
人が良さそうで騙されそうな感じのする美青年将校ぽさがよく出てました。 

天飛華音
顔に傷がある荒ぶれた海賊であっても、正義のレッドについて行くあたり彼の男気を感じます。
薔薇を加えての登場もかっこいい!目立つ役にしっかり応えてました。←大注目!

咲城けい
ティリアンにずっと寄り添い運命を共にするニコラス。
同期で個性派の華音くんとは違う涼しげな表情が印象的。
ティリアンを見つめる目が印象的でこの役に合ってました。

桜庭舞
大人しい印象だったまめちゃんの輝きが凄かった。
個性の強いぶりっ子役を嫌みのない可愛さで演じ魅了されました。
何かがはじけた感じ。こちらも今後大注目です。ショーのエトワールも◎!

音波みのり
はるこさんはお顔も演技も声も好きです。
髪型やアクセサリーにも工夫があって娘役の美を極めてられます。
今回のアクの強そうな愛人役も魅力たっぷりでした。

万里柚美
初演と同じティリアンの母役を演じるなんて素敵です。
母親でも妻でもなくは恋する女性として生きてました。お美しいので説得力あり。
6度目の母親役となった琴ちゃんとの親子の空気感はもはやプレミアム級。

 

ダーティーヒーロー

 

千秋楽、この日を無事迎えられて良かったですね。
ユーモアのある白妙なつさんのご挨拶も素晴らしい。

 

ダーティーヒーローの中でも冷酷な部類のティリアンを思いっきりかっこよく息づかせる宝塚はやはり凄いところです。

セリフの一つ一つが耳から心に突き刺さり、響いてきます。

かつてFirst Photo Bookでティリアスに扮装した礼真琴。
好きだった作品、思い入れのある作品、憧れていた作品を演じることはこの上もない幸せと喜びと思います。

ティリアンを素敵に演じてくれてありがとう。

やはり私はダーティーヒーローが好きです。

 

星・うさぎ