ミュージカルで3大バルコニーのシーンとして有名なのが『ロミオとジュリエット』『ウエストサイド物語』、そして『シラノ・ド・ベルジュラック』です。
物語の中ほどにバルコニーの場面が出てきますが、とても印象的なシーンになっていて素敵です。
最後にヒロインの脳裏にこのシーンが蘇ってきた時には胸が熱くなります。
ミュージカル
『シラノ・ド・ベルジュラック』
脚本・演出/大野 拓史
12/8 梅田シアター・ドラマシティで観劇、12/12 LIVE配信視聴しました。
楽しさと切なさを感じる素晴らしいミュージカルでした。
最近、公演の観劇後に大体の感想を書いて(放置して^^;)、配信みて補完してブログ更新する…というお気楽なスタイルが定着しています。(来年の雪組公演でこのパターンが大きく変わりそうな予感)
シラノと宝塚
『シラノ・ド・ベルジュラック』は17世紀フランスに実在した剣豪詩人を描いた戯曲です。
豪快で才能ある彼のコンプレックスがゴツい鼻!
この人気の戯曲をモチーフにしたミュージカルはたくさんあります。
宝塚では1995年に『剣と恋と虹と』(麻路さき主演)で設定をアレンジして上演。(鼻はそのまま)
今作はほぼ原作どおりにミュージカル化されています。
轟悠 / シラノ
でかっ鼻と言われると仲間でもぶん殴る。
破天荒で陽気で強くて純粋で大きな愛を持ったとびきりロマンチストな男です。
大野先生が「下手したら大コケするけどうまくいったらすごく面白くなる」
と言われていたのがよく分かりました。
シラノ役は型にハマらず役者が自由に演じた方が面白くなりそうですが、よほど舞台に熟練した人でないと確かに大コケしそう。
今の宝塚でシラノをこれほど愉快に切なく演じられるのは轟悠さんしかいないように思います。
例えば冒頭で触れたバルコニーの場面。
月明かりの夜バルコニーに佇む美しいロクサアヌ(小桜)
彼女を思いシラノとクリスチャン(瀬央)がコミカルに歌にのせて芝居をするのですが、ここの轟さんは本当に上手い。
轟さんの歌に導かれるように踊るせおっち、うっとりするほのかちゃんと三者三様の思いが浮かび上がり魅了されるシーンになってます。
もう一つ、最後の場面。
ロクサアヌに満身創痍で逢いに来たシラノの演技が素晴らしい。
かつてバルコニーで愛の言葉を語ったのはシラノだったと気づぎ、2人が気持ちを一つにした瞬間が終わりの時になった悲しさをよく表現されてました。
フィナーレではつけ鼻のままのシラノとロクサアヌのデュエットダンス、
地上では結ばれることはなかった純白の衣装の2人の笑顔が美しく、
宝塚シラノはここが物語の終着点になるのだなと思います。
轟さんの熟達した技と演技は得難いもので見応えある舞台でした。
今後は劇団特別顧問という立場になられて今までと違うアプローチで舞台に関わられていくのかもしれませんね。
小劇場で近い距離で轟さんと一つの作品を作り上げたことは星組メンバーにとって貴重な経験になりそうです。
瀬央ゆりあ / クリスチャン
オープニング、颯爽と登場して歌うクリスチャン瀬央ゆりあ、
キリッとしてかっこいい!
期待感が高まる華やかな始まりです。
クリスチャンはただ顔がいいだけの男なのか。
黙っているときだけが華なんだと自分で言ってますが。
確かに恋を成就する手段をにシラノに頼るところはちょっといけてないかもしれません。
ですがシラノの気持ちに気づき、ロクサアヌが本当に愛しているものは何かを知って身を引こうとする優しくて心ある人。
彼は素敵に年を重ねることが出来る人だったのではないかな。
夜のベンチでロクサアヌに必死で愛を伝えるところはコミカルながらちょっと切なかったですね。
この作品は一つのセリフの中や一つのシーンの中に 可笑しさと切なさが共存しているのが特徴です。
クリスチャン役もまた難しそうに思いました。
弱さもあり、それゆえ悩みそれでも恋を諦められず喜びと苦しさの中で揺れている青年というイメージで、
シラノとは違う複雑な心の機微を表現できてこそクリスチャンという役は生きてくるような気がします。
せおっちは役作りにかなり悩まれたそう。
悩み苦しみながら作り上げた瀬央クリスチャン。
シラノ轟の演技をしっかり受けとめクリスチャンとして舞台で生きていたと思います。
轟さんと呼吸がぴったり合っているのは『ドクトル・ジバコ』の共演もあったからでしょうか。
フィナーレではせおっちが主題歌を歌いセンターで男役群舞へ。
みっきぃ、朝水くん、極美くん、キラキラと美の洪水。
作中のガスコン青年隊でかっこいいダンスを見せてくれた碧海さりおくんと希沙薫くん、次回星組公演『ロミオとジュリエット』で「愛」(役替わり)を演じることにも注目ですね!
せおっちはティボルトとベンヴォーリオ、大役の役替わりが楽しみです。
小桜ほのか / ロクサアヌ
人を好きになる時、外見を重視するのかハートを尊重するのか。
若く美しいロクサアヌが美青年クリスチャンに一目惚れするのは普通のことです。
でも詩情豊かな彼女は顔だけでは満足しなかった…。
一緒に観劇した息子2は、彼女がクリスチャンに詩心まで要求するのはひどいなーと言います。
うん、確かに。笑
まぁクリスチャンには最初から自分の言葉とハートで勝負してほしかったですけどね。
彼女は美しい言葉で愛を語り愛を歌う美しいクリスチャンに恋をした。
もちろんそれは全てシラノの愛の言葉なのですが。
もしあの時その言葉や手紙を書いたのはシラノだったと知っても、彼女が直ぐにシラノを愛せたのかどうかは分かりません。
ただロクサアヌは夢見るふわふわした娘ではなくクリスチャンの死後も修道院で彼を愛し続ける、一途で強い気持ちの持ち主です。
ほのかちゃんは歌もお芝居も上手くて安定感があります。
声も綺麗で可愛くて私はすごく好き。
余裕をもって演じているように感じました。
ほのかロクサアヌはクリスチャンに恋している娘時代は自然体で可愛らしい娘です。
最後のシーン、
夕暮れから暗くなるまでのシラノとふたりだけが存在する空間が素晴らしくて、轟ー小桜2人の演技は物語の結末を崇高なものにしてくれたと思います。
印象に残った人
天寿光希
悪役のようで完全な悪役ではない男の面白さを演じるのが上手いみっきぃ。
ナウオンのテンションの高さに轟さんもタジタジでしたね、笑。好きです。
極美慎
出番もソロナンバーも多く活躍が目立ちました。
恵まれたビジュアル、これが華ってやつですね。生き生きとした役作りが爽やかで素敵。
朝水りょう
特に一幕では存在感のあるお芝居で目を引きました。
極美くんの陽の輝きとは違うミステリアスな輝きが魅力に感じます。
美稀千種
新星組組長ちぐさん、落ち着いた優しさと包容力ある演技が光りました。
シラノ観劇後日談
瀬央さんファンの息子2は観劇後にシラノという人物に興味をもち、映画「シラノ・ド・ベルジュラック に会いたい」を見たいし原作も読んでみたいと意欲的です。
今日は外出してましたが、配信中1幕の終わりに帰って来て「せおっちまだ生きてて良かった!」シラノ役の「轟さんは凄い、かっこいい」と、かなりこの作品にハマっている様子。
このような形の宝塚もあるのかと感動していました。
一つの舞台をきっかけに見聞を広められるのは有難いことですね。
このミュージカルでは誰もが心優しいシラノを愛して涙しました。
チームをまとめて魅力的なシラノを魅せてくれた轟さん、そして星組の皆さん、無事に千秋楽の幕が下りて良かったです。
素敵な舞台をありがとうございました。
星・うさぎ