雪組『 f f f / シルクロード 』東宝公演の幕が上がり、大きな砂時計が反転して再び時間が動き始めました。
舞台はシルクロードのロマンを掻き立てられるシンプルで統一感のある色づかい。
多色づかいを抑えることで望海風斗、真彩希帆、雪組生一人一人が放つ色彩が鮮やかになり、
素敵なシルクロードの旅を体感することができました。
雪組の皆さん本当にありがとうございます。
どうか無事に千秋楽まで完走されますように。
宝塚大劇場で観劇した時の感想になります。
かんぽ生命 ドリームシアター
レビュー・アラベスク『シルクロード~盗賊と宝石~』
作・演出/生田 大和
砂漠を彷徨う狼
生田先生が『シルクロード』創作ノートに「盗賊は砂漠を彷徨う狼」のイメージと書かれていたことから、
ブルーに輝く宝石(真彩) を追いかける荒ぶった黒いターバンの盗賊(望海) を素敵な狼と思って観ていました。私だけかな?
ともかく、ターバンを巻いた望海さんは最高にかっこよかったですね。
そして気になる舞台中央の巨大な砂時計。
これについて生田先生がこのように語られてました。
「砂は時間そのもので、この砂時計にこれから続く場面のすべてが詰まっているようなイメージ。」
砂のひと粒ひと粒が望海さんの今を刻んでいき、雪組の今を刻んでいるのだなと。
砂については翔ちゃん(彩凪翔)が座談会で言われていたことも印象的でした。
「菅野先生は、砂に対してのイメージや歌い方についてもすごくアドバイスをくださって、本当に勉強になった。砂の香りなど情景がお客さんに伝わるよう頑張りたい。」
難しそう。翔ちゃんは歌もダンスも活躍の場が多く物語の案内役でもあるので求められるものも大きいような気がします。
娘役の砂役というのも面白く、よく見るとそれぞれダンスや表情で砂を表現されているようで皆さん工夫されてるなぁと。そしてとても美しいと思いました。
ダイヤモンド真彩
宝石(ホープ・ダイヤモンド)になって歌い踊る真彩希帆
どんなジャンルの曲も見事に歌いこなす、まさに歌姫。
ミステリアスでゴージャスでとても綺麗でした。
ホープ・ダイヤモンドは持ち主が転々としていくところから「呪われた青いダイヤモンド」と呼ばれるようになったとか。
もっともこの伝説はかなり脚色されているようですね。
産地はシルクロード生まれ、一時期窃盗団に盗まれていた時期もあるようで、
生田先生はよくこの伝説を持つ宝石から発想を飛ばされたなぁと感心しております。
その宝石の真彩ちゃん、最後の舞台でお芝居、ショー共に魅力を爆発させたのではないかと思っています。
トップ就任以来どの役も卒なく演じられてましたが、サヨナラ2作品とも役柄の性質上望海さんと対等に向き合う強さが必要で、それができる真彩ちゃん(むしろ持ち味全開)に私は深く感動しているのです。
今回はダンスも素晴らしくて卒業後もまだまだ可能性が広がりそうで、わくわくさせてくれる人です。
キャラバン隊リーダー
キャラバン隊のメンバーにはカリさん(煌羽レオ) まちくん(真地佑果) けんじくん(ゆめ真音) ひーこさん(笙乃茅桜)たち卒業メンバーが。
一緒に旅をするというのはいいですね。
リーダーは彩凪翔
赤い髪と衣装がよく似合っていて素敵。
翔ちゃんに誘われるままシルクロードから広がる様々な幻想の世界へと時空を越えて旅をしますが、キャラバン隊の旅にも時間の砂は流れています。
フィナーレで翔ちゃんが銀橋で客席を見渡すところでいつも私の砂時計は一瞬止まります。
去り際の「じゃあね! 」があまりにかっこよくて翔ちゃんらしくてこの瞬間を大切にしたいと。
その後翔ちゃんから宝石を奪い取るイケメン盗賊が卒業する朝澄希くんというのもいい演出。
黒燕尾の彩凪翔、煌羽レオの洗練されたダンス、磨かれた男役の美。
引き継がれていく宝物ですね。
亡国の夢幻
彩風咲奈 朝月希和
お芝居の絡みはなかったですが、ショーは2人のシーンが多くて、そのどれもが明るい未来を感じさせます。
だいきほが原色ならさききわはパステルカラーの輝き、
だいきほが真夏ならさききわには春の訪れを感じます。
(私のイメージです)
「幻視」のシーン
穏やかで温かみのある夢のような世界観を次期トップコンビが創りだします。
それはシルクロードの砂の下に眠るかつて愛し合った恋人たちの幻。
身体はいつか土に帰っても美しい時は永遠に生き続けているのだと、2人の笑顔に生きる意味を感じてほろりとなる。
咲ちゃんの横で伸びやかに寄り添い踊るひらめちゃん。
2人のワルツが幸せに溢れていて温かい気持ちになります。
フィナーレでは望海さんから笑顔で薔薇を受け取った。
渡された薔薇の重みは咲ちゃんしかわからないけれど、きっと新たな旅で多くの人に夢やときめきを届けてくれるでしょう。
春からはひらめちゃんと一緒に素敵な花を咲かせてください。
千夜一夜物語異聞
シャフリヤール 朝美絢
シェヘラザード(宝石) 真彩希帆
黄金の奴隷(盗賊) 望海風斗
シャフリヤール王 は『千夜一夜物語』の中の架空の王様。
妻のシェヘラザードから毎夜物語を聞いている。
そこへ「ワルだぜ! 」の奴隷くんが連れてこられてシェヘラザードと惹かれ合う…
というちょっと切なく危険なストーリー。
何しろ王様は激しい。
奴隷を足蹴りにし嫁をビンタしたりする!
それが素敵なんだけど(お芝居だから)(あーさだから!)
今後はショーの危ない男系はあーさが担当してくれるのかな。←希望
このシーン、あーさは歌も良くてオーラがあり見応え十分でした。
真彩ちゃんとの並びも新鮮で良かったですね。
大世界ーダスカー
皆の大好きな上海のクラブの名はダスカ
花組時代の朝夏まなとさん主演作品「BUND / NEON 上海」(2010年の生田大和のバウホール公演デビュー作)で、
望海さんが演じたキャラクターと同名の「劉衛強」として登場。
それだけでもワクワクするのに
惹きつけられる要因が満載。
2つの勢力のマフィアによるダンスバトル…という世界観。
両脇に羽織夕夏、有栖妃華を従えた
真彩希帆の見事なラップ。
原曲はCaravan Palaceの"Lone Digger"
♪ねぇどこ見てるの私はここよ
リズムを感じて
リズムを感じながら踊る望海風斗
色気ダダ漏れチャイナ
(青幇)彩風咲奈 vs (紅幇)彩凪翔
華やかなダンスバトルに萌え転がる
とにかくカッコイイ。
男も女も音楽もダンスも。
劉衛強がダスカに生きていると思う瞬間
このシーン望海さんほど似合う方はいるだろうか。
1番心が揺さぶられる大好きなシーンです。
それなのに
どうしたことかいつも急激に寂しくなります。
だいきほ!
最後の黒燕尾で一輪の薔薇を持って佇む望海さん。
真彩ちゃんのホープ・ダイヤモンドを思わせる青い薔薇。
薔薇は次期トップ咲ちゃんへと渡され、
白い衣装で最後のだいきほ甘いデュエットダンス。
流れるように進んでいくシーンはどれも素敵で、
幕が降りる度に砂時計は静かに流れているのだと我に返ります。
中盤まではストーリー性を持たせ自由な発想ながらテーマ性を持って展開していき、
後半はサヨナラ公演の王道へと繋がっていくという流れはとても良かったし、羽山先生の黒燕尾の振付けも素敵でした。
楽曲も期待どおりの素晴らしさで歌詞も覚えやすくて記憶に残るメロディライン。
最強ボイスが菅野よう子先生に出会えて良かった。
今さら発言ですが望海さんの喉は一体どうなっているのだろう。
自然で無理のない深く豊かな声。
歌えば言葉の持つエネルギーがよく響く滑らかな旋律となり人の心を動かしてくる。
そこに極上の真彩希帆の歌が加わり、2人の歌声が溶け合う。
私がコンビでこれほど歌で魅了されるのは初めてです。
何度でも言う。ありがとう。
砂時計
『シルクロード』作・演出の生田大和先生は望海さんの宝塚人生に縁が深い先生でした。
前述した『BUND NEON』は先生のデビュー作、望海さん花組新公主演『太王四神記』、雪組東上公演『ドン・ジュアン』、お披露目公演『ひかりふる路』、サヨナラ公演『シルクロード』と、望海さんの節目の時にはいつも先生がいらっしゃるように思います。
もしも、今回お芝居の演出が生田先生でショーが上田先生だったら全く違うサヨナラ公演になっていたでしょう。
ちょっと興味ありますね。
『シルクロード』は主役を引き立てながら全員が場を得て活躍していたことも良かったところです。
砂時計の上で待機している砂は未来、
流れる砂が今ならば、下の砂は今まで積み重ねてきたもの。
と、砂時計はよく人生に例えられます。
ならば下の砂は望海さんの宝塚の輝かしい歴史でもある。
男役・望海風斗のシルクロードの旅は終わっても仲間たちの旅はまだまだ続きます。
旅の終わりに望海さんはどんな景色を見るのでしょう。
最後の日まで宝塚の男役を完全燃焼されることを祈っています。
雪・うさぎ