風のワルツ

宝塚歌劇、楽しくブログで綴ります。

月組『チェ・ゲバラ』感想-轟悠とエルネストー終わりなきロマン

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月組公演『チェ・ゲバラ』8/17観劇レポです。
主に轟悠さんと風間柚乃さんについての感想になります。 

作・演出は原田諒先生。
ストーリーの流れ、楽曲、衣装、全てがまとまりよく見応えのある舞台になってました。

 

轟悠とエルネスト・ゲバラ


宝塚の舞台でこのような作品に出会うと、やはり轟悠さんの存在の大きさを感じます。

先日映像で観た『パパ・アイ・ラブ・ユー』
ここまでコミカルな轟さんを見たのは初めてで新鮮でした。
相当なセリフ量と思いますが軽妙でテンポよく2枚目コメディを堪能しました。

芸に終わりはないと言いますが、轟さんの男役芸が更に広く深く進化していることを実感していたところのゲバラ役。
大変興味深い舞台になりました。


チェ・ゲバラという人物を簡単に自己紹介しますと、
1928年生まれ (昭和3年) なので、ご存命なら今年91歳。
そんなに昔の方ではないんですね。

1959年には来日して、広島の原爆記念館にも訪れています。

本名はエルネスト・ゲバラ
チェというのはあだ名のようなものになります。

アルゼンチンの裕福な家に生まれて医者になったエリート、かなりのイケメンで秀才。
選択によっては穏やかな人生を全うできたかもしれません。

しかし彼はキューバの貧困を目の当たりにしたことがきっかけで、独裁と戦うためにカストロ兄弟らとキューバへ向かい己に課せられた運命に立ち向かいます。


さて、この意思の強い情熱的な革命家を演じる轟さん。
先述したとおり、轟さんの持つ個性は年月と共に磨かれ熟成され、男役を極めていかれています。
今宝塚においてゲバラ役をこの完成度で演じられるのは轟さんだけかもしれません。

革命家としての熱量や力強い演技はもちろんですが、妻となるアレイダへ向ける眼差しがとても印象的でした。
出会いから別れまで、場面によって異なる表情でありながら愛に溢れた優しい眼差し⭐︎
形だけではなく心で演技されているのだなと。
 

後半キューバの革命を成功に導き、キューバ政府の要職に就き子供も授かりながら自分の信念からまた革命に身を投じます。

何という激しい人生・・。


原田諒先生の言葉から。

強烈な個性とロマンティシズム、あえて困難な道を選び進み続けるゲバラの高潔な生き様は、轟悠に通じるものがある。

凄い言葉ですが、そのとおりだと感じられる方も多いのではないでしょうか。


外側だけ見ると「ゲリラ」という題材は宝塚の夢の舞台とは異質な世界に感じられますが、
根底にあるのはゲバラの究極のロマンティシズム

そして轟さんがこの先も歩み続けるであろう宝塚の男役という道。
現実的には異質なことであると同時に私たち究極のロマンを与えてくれる世界です。

轟さん自身もロマンチストな方なのではと想像しているのですが
共演された月組の生徒さん、この舞台での経験は今後様々な形で生きてくると思います。

 

風間柚乃とフィデル・カストロ


その、轟さんの影響を最も受けたであろうカストロ役のおだちん(風間柚乃)。

実力派のおだちんにとって歌えることは特に大きな強みだと思うのですが、今回も期待を裏切らず力強い歌声を聞かせてくれました。

 

2人の演技力の高さでゲバラとカストロの年齢差を感じさせなかったのですが、学年差を考えるとそれはとんでもなく凄いことですね。

例えばカストロがアレイダのことをひやかしてゲバラが照れるというシーンでは、いいように観客の笑いを誘っていました。
間の取り方が上手いのです。

最後にゲバラが離れていくところでは切なさがよく伝わってきました。

 

因みにこのフィデル・カストロいう人物ですが、
ゲバラと共にキューバ革命の中心的役割を果たした後、キューバ14代目首相として49年に渡り統治し、2016年、90歳で亡くなります。

 

おだちんの演技を上手いと思ったのはラストパーティの学生役のセリフを聞いた時が最初でしたが、その後『エリザベート』代役のルキーニ役を観た時に只者ではないと思いました。

そういやルキーニ役は轟さんの雪組時代の当たり役でもありましたね。

おだちんはルキーニ役やカストロ役など個性が際立つ役や情熱的な役に、より魅力を感じますが、まだまだ若いのでこれからどのように成長されるか楽しみです。

カストロ役もしっかりやり遂げてますます勢いが加速していきそうです。

 
この公演でれいこちゃん(月城かなと) が休演されたことは本当に残念でした。
本当に本当に残念でした‼︎

次回の大劇場公演で元気なれいこちゃんに会えることを心から楽しみにしています。

 

エルネスト・ゲバラの名言から

 

1967年10月9日、英雄ゲバラは39歳の時ボリビアの山中で処刑されました。
最期の瞬間、銃撃をためらう兵士に向かって以下の言葉を放つ。
「どうした、お前の前にいるのはただの男だ。よく狙え。怯むな!」
このシーンの轟さんは本当に素晴らしく圧巻の演技でした。

ゲバラの残した数々の名言の中で最も印象的な言葉と言えば、

明日死ぬとしたら、生き方が変わるのか?
あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なのか。

革命家として生きるゲバラにとっては今日1日を生きることの意味がどれほどであったのか。
今の時代を安穏と生きる私たちが答えるには難しい投げかけだと思いました。


月・うさぎ

 

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